「ご都合主義」の定義

「ご都合主義」という用語は、当サイトの記事を含む様々なレビューや感想のなかで目にしますが、人によって微妙に定義が異なるようです。私の場合、ご都合主義とは、「事前に伏線などで原因が示されていないにもかかわらず、後の状況においてストーリー進行上都合の良い結果が生じるのを許容すること」だと理解しています。

都合の良い設定は、必ずしもご都合主義的な設定であるとは言えません。もし単に都合の良い設定をご都合主義的だというなら、魔法や超能力の類はすべてご都合主義的と言わなければなりません。突き詰めていくと、主人公を慕う幼馴染がいるとか、そういうのもご都合主義的といえるかもしれません。そのような定義では、シナリオの構造を分析するうえで何の役にも立ちませんから、私は先述した定義のように狭く考えています。

では、「どの段階で原因が示されていれば、ご都合主義の謗りを免れるのか」については、少なくとも「状況Aにおいて結果Yが生じるなら、原因Xは状況Aより前に示されている必要がある」と思います。例えば、勇者が魔王との決戦で真の力に目覚めるのであれば、少なくとも決戦より前の段階で勇者に秘められた真の力の存在が明らかにされるべきですし、プロットの構成上可能であれば真の力に目覚める条件についても言及されるべきです。

ご都合主義の例外は、ストーリーの序盤において敷衍された世界観です。これは、その作品を読み解くのに必要不可欠なルールであり、ルールそれ自体の原因を遡っていくとキリがないので、例外とみなしています。ただし、ストーリーがある程度進んでから後付されたものについては、なぜそれがそのタイミングにおいて提示されたのか納得のいく構成上の理由が読み取れないかぎり、私は「ご都合主義的だ」と考えるでしょう。