ストーリー概要
ゲラニス・ヴィダ――この原因不明の不治の病は、エルフや妖精の住まう世界を徐々に蝕んでいた。青年カイは、気紛れな妖精メルティを旅の道連れに、この世界を救うための『鍵(CLAVIS)』を探す旅を続けていたが・・・・・・。
総評 75/100(良)
ライトファンタジーとして丁寧に作られた世界観は素晴らしい。特に演出や音楽については、商業同人以上に優れたものがある。本作の価格を考慮すれば、これで採算が取れるのかと心配なほどクオリティが高い。
しかし、シナリオの終盤のつくりが雑なために、素直には他人に薦めがたい。本作がエロ重視なら別に構わないが、典型的なシナリオ重視-エロ軽視の作りとなっているのが問題である。
生粋のライトファンタジー好きで多少の超展開は構わないという方には合うかもしれないが……それ以外の方にとっては、正直微妙な出来だと思う。
シナリオ 15/30点
(1)ストーリーと世界観は、90年代全盛のライトファンタジーを思わせる、穏やかなロマンスに満ちている。登場人物たちはみんなエルフか妖精で、彼らはみんな良い人ばかりだ。不治の病がこの世界を蝕み、魔獣が森に現れるようになっても、エルフたちは牧歌的な日々を過ごしている。
(2)序盤から中盤にかけてのストーリー展開は、話の先を急がずに、しっかりと登場人物の魅力や世界観を伝えている。伏線もさり気なく配置され、中盤までの話の流れには無理やりなところがない。こういう丁寧なストーリー展開については、早漏な展開がなされることの多い他のエロゲーよりもずっと、好感が持てる。
(3)しかしストーリー終盤に入ってからは、残念ながら、いわゆる超展開が目についてしまう。重いテーマで『世界を救う』という大風呂敷を広げたわりには、話の尺がまったく足りていない。本来ならもっと段階を踏んで描くべきところを無理やりに詰め込んで、無理やりに感動させようとするストーリー展開には失望した。
(4)エロシーンについては、あっても無くてもいいというレベルの代物ではない。むしろ、こんなものは無いほうがいい。あんなふうに無理やりなタイミングでまぐわうのを観るくらいなら、キスで済ませてくれたほうが余程自然だ。エロの内容も実用可能なレベルだとはお世辞にもいえないから、本作にとってエロシーンはマイナス評価の原因でしかない。
グラフィック 25/30点
(1)基本CG枚数は、基本重複を含めなければ20枚(キャラ絵は17枚)。つまり、相場の倍近い枚数があることになる(本作は945円)。
(2)本作のグラフィックは、どこまでもファンタジーの世界観に忠実だ。背景や衣装のディテールが美しく描き込まれており、背景に舞う粉雪のようなアニメーションなども美麗である。
(3)キャラクターの立ち絵の動きもなかなか良い。立ち絵の口パクと声の同期がきちんと取れている。声優が演技していないのに、立ち絵の口だけは依然動いているということがない。
(4)一枚絵の質については、バラツキがある。一般によく目にする構図においては上手なのだが、それ以外についてはクオリティが低い。特に舞巫女の絵とそれ以外については、本当に同じ絵師が描いたのかと疑わしく思える。
音楽・声優 20/20点
(1)声優さんの演技については、エナ役以外は問題なし。エナについては、平静のときと感情的になっているときで、声の調子があまり変わらないのが不自然に聞こえる。だが、同人ならこれでもいいと思える程度ではある。
(2)BGMは14曲もある。ボーカル曲もある。その何れもが同人としてはクオリティが高く、ファンタジックな世界観にしっかりマッチしている。
エナ | 本多しの舞 | リンカ | 大山チロル |
メルティ | 橘雛莉 | フィアリス | 凍牙嵐 |
謎の男 | 方広寺悠宇 |
システム 15/20点
(1)クイックセーブ以外の基本的なシステムは揃っている。テキストが通常の明朝体で読みづらいが、フォントをブロック体に変えると、boldされて読みやすくなる。メッセージウィンドウもやや濃いが、透過率を調整することができる。
(2)不満なのは、セーブ枠がたったの10個しかないこと。選択肢が少ないからこれでも足りると思うかもしれないが、実は本作のエンディング条件はガチガチなので、自力攻略でスムーズに行かない場合には足りなくなる。
エッチ内容について
処女・独占。エナ、リンカ、夢のなかの少女、どちらとも1回だけエロシーン有。