概要と評価 185/200(秀)
作品のあらすじ
かつて架上市と呼ばれていた関東地方の中核都市は、現在、災厄の魔女たちが住まう背徳の都”邪法街”となっていた。元SAT隊員の角鹿彰護(つぬがしょうご)は、7年前の因縁から、邪法街を支配する組織を討ち滅ぼすためこの都市にやって来た。彼に付き従うのは、災厄の魔女の一人であるキャロル。角鹿は、従順なキャロルを己の道具として用い、過去を清算するため支配者の塔に挑む。
感想の要旨
ストーリーのテーマ性とエロさの追求とを両立させた作品。不死身の存在を穢し、徹底的に破壊する快楽を提供してくれる。全体的にみて、かなり完成度が高い。
エロシーンの属性
凌辱特化、リョナ重視。人体の部分欠損あり。そのほか触手凌辱、輪姦・乱交、臨月姦(※孕むのは幼蛆の仔)、フタナリプレイなどのシーンが目立つ。堕胎・出産・産卵あり。口淫は、イラマチオ、チンカス舐め取り、触手責めが主。和姦もあるが、全体の1割程度。
目次
- 刺し餌、あるいは蛆虫に捧げる餌
- グロテスクなエロシーンとその限界
- 口直しとしての和姦
- コメント
刺し餌、あるいは蛆虫に捧げる餌
欠点をはじめに言っておくが、本作のプロットは雑である。
個々のエピソードは刺激的だが、全体としてみると歪に繋ぎ合わされたパッチワークのような構成になっている。葛藤する登場人物が心変わりするのは良いが、そのタイミングが唐突で理解に苦しむ。エピソード間の連続性が把握しづらく、なぜこんな状況になっているのかと疑問に思うことが多かった。トゥルーエンディングをそれ以外のエンディングから隔離した弊害が、至るところで顔を覗かせている。
派手なメロディと強い言葉ばかりを並べた厨二ソングみたいなシナリオだ、と評せなくもない。しかし、私はそれでも本作のシナリオを嫌いにはなれない。むしろ好きだ。というのも、確かにストーリー性という一面においてはいくらか評価が下がるけれども、エロゲーにとってそれは全てではないからだ。
Maggot baitsは、ストーリー重視といっても過言ではない程度にテーマ性を持っていながら、同時に抜きゲーとしてのエロさの追求も忘れていないハイブリッドな作品である。
「蛆虫(Maggot)に等しい人間が、神の前で清く正しくあることができようか」というのはヨブ記25章1-6におけるビルダドの意図であるが、邪法街の人間たちはあらゆる規範を踏みにじる正真正銘のクズ揃いだ。災厄の魔女たちはただの人間に対してはほぼ無敵の存在だが、しかし彼女たちはまた彼らが求める餌(Bait)でもある。神ならぬ身は、その暴力の大小にかかわらず、水が下に流れるように、いずれ底のほうへと堕ちていく。その最も底にあるのが邪法街という本作の舞台であり、そこで蛆虫と魔女は互いを餌として貪り喰らうのだ。
魔女は誇り高く、過去に頓着しない者たちだ。彼女たちにとって、人間の男は餌であり、その精液は魔力の源だ。だから彼らから搾精し、一時の快楽に溺れるのは羞恥を覚える行為ではない。搾精後の男たちはもはや用済みで、殺してしまっても構わない。実際魔女にはそれが出来るだけの力があり、彼女たちはそこに人間に対する優越を感じている。
その一方で、邪法街には魔女が恐怖する存在が蠢いている。それは幼蛆と呼ばれる触手生物だ。無敵であるはずの魔女たちは、この醜悪な生き物に犯されるくらいなら、生きながら肉体を切り裂かれるほうを選ぶだろう。幼蛆は堕落した人間の醜悪さを象徴するメタファーだ。その醜悪さの顕現を前にすると、さすがに鈍感な魔女たちも、上位者であると思っていた自分もまた、蛆虫のような存在を活かすための餌にすぎない、という事実を無意識のうちに突きつけられる。
そう、魔女とは不死身の餌なのだ。蛆虫を喰らい、絶望を釣り上げるための刺し餌(Maggot bait)なのだ。彼女たちは、首を切断されないかぎり、どんな責めを受けても永眠することがない。たとえ一時的に死んでもすぐ復活する。手足を切断され頭を潰されようと、内部から侵入した触手に内蔵をぐちゃぐちゃにされようと、だ。
おまけに、魔女は無駄にプライドが高いものだから、自分が男を犯すことは当然でも、男が自分を辱めることは許せない。それ故、肉体と精神を辱められると、良い声で反抗し、そして喘いでくれる。我々はそんな彼女たちを見て、いつこの女たちの気高い精神が粉々に破壊され、我々を罵ったその口で許しを請い、その抜け殻となった肉体が使い捨ての遊具として消費されるのかという妄想を楽しむことができる。
Maggot baitsのシナリオの良さは、まずここにあるのだ。一見上位者と思われる存在を穢す快楽、それを味わえる舞台を周到に整えてくれたことが素晴らしい。本作を抜きゲーとして考えるなら、先にあげた欠点などどうでも良いくらいだ。
抜きゲーとしてのMaggot baitsは、とても作りこまれている。それはシナリオだけではない。グラフィックや音声、そしてシステムに至るまで素晴らしい出来なのである。
グロテスクなエロシーンとその限界
Maggot baitsのエロシーンの9割(51/56)は凌辱であり、その大半は拷問じみている。人体の損傷(痣・裂傷・欠損等)や過度の流血をともなうリョナシーンは27本もある。そのほか触手凌辱、輪姦・乱交、臨月凌辱、フタナリ改造プレイなどが主な内容になっている。口淫もあるが、大体はイラマチオ、チンカス舐め取り、触手責めといったきついものだ。
つまり、エロシーンは超ハードコア志向なのである。ヒロインへの暴力行為の過激さだけでいうと、TinkerBellの作品よりもヤバいといえば、その凄まじさを分かってもらえるだろうか。
なにせ魔女は首を切られないかぎり死なないのである。人倫を弁えない蛆虫どもが、無抵抗の魔女をそう安々と殺してしまうわけもない。魔女狩りに敗北した魔女は監禁され、切断刺突その他の方法で血抜きされ、幼蛆に孕まされ、最後は公開処刑でゴミのように処分される運命にある。拷問という言葉が微温く感じるようなシーンで、彼女たちがあげる悲鳴と嬌声にはとても興奮させられた。
はましまさんの描くヒロインのキャラクターデザインは、とても魅力的だ。顔や衣装が私の好みに合っているから、ということだけが魅力を感じる理由ではない。ヒロイン一人一人の体格がきっちり差別化されている、ということこそが最も注目すべきポイントだ。
ボディビルダーのようなサンディ、それより劣るが十分筋肉質なグロリア、小柄スレンダーなイザベル、少女アスリートのようなキャロルとウィルマ、ロリータなアリソンちゃんなど……美少女の肉と骨の有り様に魅力を感じる紳士諸君なら、エロシーンでの彼女たちの肉体美をみれば、感激してしまうことだろう。魔女の腹筋を撫で回したい、と考えるくらいは当然の欲望だ。
さらにビジュアルには、肌の色や陰毛の生え具合、妊娠時の乳輪や臍の形状にもこだわりを感じる。肛門は、アナルブリーチングされた一般的なエロゲヒロインのそれと違い、立派に色素沈着しているので安心してほしい。
さて、本作のエロシーンでは、そんなふうに魅力的に描かれたヒロインの四肢や内蔵が、当たり前のように千切れ飛ぶ。生きながら焼かれたり、焼き印を押されたりもするし、達磨にされて家畜化されることだってある。凄惨なシーンは、それがショッキングな内容であればあるほど、差分が惜しみなく投入され、ダイナミックに描かれている場合が多い。気高いヒロインが無慈悲に汚され、壊されていく過程が、ビジュアル面でも丹念に描かれているのは高く評価できることだ。
ただ、一部のリョナファンは、肉体の切断面などが曖昧な塗りで誤魔化されていることに不満を覚えるかもしれない。また、ビジュアルが全体的に明るく美しく彩色されているために、暴力のリアリティが希薄化されているように感じるかもしれない。しかし、人体の欠損部分の多くにモザイクがかかっていることから考えると、このくらいがエロゲーの倫理的限界なんだろう、と個人的には思っている。私としては、ギリギリのラインを攻めてきたことをむしろ評価したい。
口直しとしての和姦
血の滴るレアステーキを何枚もおかわりした後、冷たいバニラアイスも少し食べたくなるのは、仕方ないのではないかと思う。いくらヒロインが猟奇的に犯されるところが見たくて本作に手を出したといっても、フルプライス作品の尺は長いのだ。暴力という強い刺激にも慣れてしまえば鈍感になる。だから、血と脂でべたついた口内をリフレッシュするような、そんな甘くて冷たいものが時に求められるのは、自然なことだ。
Maggot baitsのメインヒロインであるキャロルは、冷たい肌色の少女だ。彼女はその外観の冷たさとは裏腹に、真心から主人公のペニスに奉仕してくれる。その妙に甘ったるい空気をまとったキャロルとの和姦は、人間の精液を力の源としか思っていない他の魔女のエロシーンとは明らかに違う。しかし、それはまた、和姦エロゲーの甘ラブセックスとも違い、恋人や愛人とするそれとは異なる作業性を感じさせる内容でもある。
出典:CLOCK UP『Maggot baits』
これは摂食行為だと思いながら、顔を上気させるキャロルはとても愛らしい。
そうした微妙な距離感覚で行われる冷たいセックスは、ほんのりと僅かに甘い。その少しの甘さは、殺伐した本作のなかではあまりに貴重すぎる甘味だ。そのせいか、本作に猟奇エロを求めて買った私をして、最も印象づけられたエロシーンは、キャロルとの和姦になった。
尤も。Maggot baitsという作品にとって、ヒロインとセックスすることはゴールではない。つまり、キャロルとの和姦は食後のデザートではなく、単なる口直しだ。ここからエロシーンはさらに過激になっていくので、生粋の凌辱ファンは安心してほしい。キャロルの甘みで口を潤したことで、それ以降の血と脂でぎとついたエロシーンはますます刺激的なものになっていくのだ。
コメント
DLdouは約一年近く休止していたが、再開初のレビュー作品が本作で良かった。全体的にみて、非常に完成度の高い作品だった。システムに関してのレビューは、昔書いたのと同じような内容の繰り返しになるのであえて避けたが、これはもう不満を述べるところがないように思う。売れ行きもAmazonのランキングを見るかぎり好調なようなので、次回以降にも期待が持てそうだ。
- 総合評価 185/200点
- シナリオ 45/60点
- グラフィック 80/80点
- 音声 40/40点
- システム 20/20点
作品情報
タイトル | Maggot baits |
ブランド | CLOCK UP |
発売日 | 2015年11月27日 |
ダウンロード販売 | FANZA |
パッケージ通販 | Amazon 駿河屋 |