総評 120/200点(可)
原画、声優さんの演技が秀逸な作品。シナリオは部分的にみれば面白いと感じられるものの、全体的にみれば杜撰である。『タユタマ』を料理に喩えるなら、ありったけのスパイスを考えなしに注ぎ込んだカレーみたいなものだと思う。
シナリオ 30/80点
和風ファンタジーをベースにした学園モノ。シナリオは、太転依三強との戦いを軸にして展開される。が、結局は馴れ合いとコメディに落ち着くので、本格的なバトルは期待できない。
『タユタマ』にはそこそこ笑えて、感動できるシーンがいくつかはある。伏線も雑ではあるが存在しており、いちおう回収もされていた。個々のストーリーを部分的に読むぶんには、面白い内容だったと思えなくもない。
だが、シナリオの全体的な構成の欠陥は、その面白さを覆すほど多くある(以下に列挙)。製作者側は、やりたいネタが沢山あるのは分かるが、もう少し作品全体の調和について考えてほしい。
- 余計な展開やら設定を加えすぎて、それまでの展開がぶち壊し(Ex.1,2他)。
- ヒロインたちは、基本的に人の話を聞かない。
- 主人公の性格が序盤から終盤にかけて一貫しない。
- 攻略ルートによっては、主人公がほとんど活躍しない。なのに、何故か周りからヨイショされまくる。
- 共通ルートが攻略対象ごとに、悉くマイナーチェンジされている。そのせいで、スキップ機能が実質無効化されている。
- 共通ルートの比率が高すぎる。7割くらいは共通だったと思う。
- 和風ファンタジーの世界観に、洋風のお嬢様学園を持ち込んだ必然性がない。最後まで読んでみたが、どうやらマジでお嬢様モノ”も”やりたかっただけらしい。
<Ex.1 ネタバレ注意 危険度B>
フローレスがひどい隠蔽体質で差別主義の学園だというのは分かる。が、何故そういった世間体に過敏な学園が、生徒一人を拉致監禁したりするのか? しかも、主人公たちがその生徒を救おうとする場合は(不法侵入で)犯罪だ、というのだから、馬鹿馬鹿しい話だと思う。
<ネタバレ終了>
<Ex.2 ネタバレ注意 危険度C>
フローレスに闖入者が入ったときの、エヴァンゲリオンのパロディ演出は、いったい何がしたかったのか。あれで喜ぶのは誰なのか。シナリオライターの自慰表現なら、同人でやってほしい。
<ネタバレ終了>
CG 45/60点
原画の萌木原さんは、流石に安定感のある良い仕事をしている。イベントCGも立ち絵も、基本的に完成度が高い。ただ、キスするときのカットシーンなど一部CGは手抜き気味なのが残念。
エッチシーンについては、美冬の表情がたいへん良かった。ふだん凛々しい彼女が、だんだんとエロい表情に変化していく様が見て取れた。特に、2-7番目のTシャツを着て寝転ぶ美冬のCGは、マイベストだ。
音楽・声優 35/40点
音楽は、どれも軽快な曲調で各シーンにピッタリ。キャラソンについては、RainyPainが演出的にも印象に残る曲だった。
主人公の父親役は、あの若本さんが担当している。はじめは「これはないな」と思ったが、聞いていくうちに「これがベストだ」と思えるようになった。悪役とコメディをやらせると、若本さんは本当に良い仕事をする人だ。
システム 10/20点
基本システムそれ自体は、とっても使いやすい。テキストやオート、スキップ関係の調整が充実しているのが良い。しかし、シナリオのほうで余計なことをしてくれているせいで、それが半分も活かされていないのが残念。
エッチ内容について
プレイはオーソドックスな内容ばかりだが、足コキやソフトSMはある。