総評 85/200(不可)
サウンドノベル形式の伝奇風アドベンチャー。シナリオにもグラフィックにも見所はあるものの、構成や作画が稚拙すぎる。この作品が商業処女作であるらしいので、次回作では今よりずっと洗練されたものを期待したい。
シナリオ 20/80点
閑散とした山村で催される秘密の儀式。物語はその儀式を主軸とし、日本神話の知識を絡めて展開していく。土着の村人たちは儀式の内容をよく知っているようだが、主人公だけは詳細どころか、その儀式の存在自体を知らなかった。
つまり、同じ村内にあって、主人公だけが蚊帳の外、といった状況。それが、寡黙な転校生 紫陽花との奇妙な交わりによって、急激に変化していく。主人公はそれまで無関係であった儀式の当事者となり、この村の異常な実態を目の当たりにすることになる。
日常から非日常へ。平穏が唐突に、理不尽の恐怖へと変わる。物語の随所に『ひぐらしのなく頃に』の影響が見受けられるので、そういうのが好きなら……楽しめないこともないか。
ルートの構成について
全10章の章立て構成。攻略対象は、紫陽花、白屈菜、楓、万年青、菫の5人。個別のノーマルエンド以外にもバットエンドが数多くあり、ノーマルエンドまでのフラグ立てはけっこう厳しい。少しミスすると、バットエンドへ直行したり、攻略していたヒロインのルートを外れたりする。
ルートの作りは杜撰である。選択肢の選び方しだいでは、物語の伏線や説明がスキップされ、ひどいご都合主義や説明不足が生じる。また、紫陽花を真っ先に攻略しないと、その他ヒロインのシナリオで意味不明なところが多すぎて、ついていけなくなる。
複雑な構成で描ききる実力がないなら、はじめから選択肢なんて無くてもいい。次回があるなら、何よりもまず、まともな構成であることを期待したい。
物語それ自体の構成について
物語は、仮に真っ当なルートを辿ったとしても、ご都合主義かつ説明不足なところが多い。また、物語の根幹となる設定については、そのほとんどが伝聞系で語られる。
つまり、主人公に伝えられる情報は間接的なものばかりで、直接体験できるのは終盤だけ、ということになる。しかも、情報元は図書館で調べられるレベルの神話や、100年以上前の真偽不確かな事件のみである。これでは、山村で異常な何かが行われようとしていることについて、説得力を欠く。
伝奇やサスペンスは、設定が命である。設定に命を吹き込むのは、説得力のある情報や体験だ。その設定があることに説得力がなければ、そんなものは駄作以外の何物でもない。
『かぎろひ ~勺景~』の物語の構成からは、書き手のやりたいことばかりが前面に出ている印象を受ける。物語の設定や展開の辻褄あわせという面倒な作業の存在が、少しも感じ取れない。同人で出すならやりたいようにやればいいが、商業ならそういうところをちゃんとしてほしい。
エロについて
エロシーンの尺は短め。エッチの内容は基本的にオーソドックスだが、飲尿・放尿・失禁、逆レイプや強姦・輪姦もある。
グラフィック 25/60点
基本CG枚数は、88枚。エロシーンは、28本。その内訳は、紫陽花(7)、楓(6)、白屈菜(6)、万年青(2)、菫(5)、瑞樹または絵里(2)となっている。
CGは、部分的には良いものもあるが、全体的にいって粗雑。エロゲーなのに、人体がまともに描けていないのが致命的だ。菫の一枚目なんて、両腕が無くなっているように見えて不気味すぎる。
モザイクはやや雑だが、同人のような薄め修正になっている。
音楽・声優 30/40点
BGMは全26曲。各キャラごとにテーマ曲が一曲ずつ有。ボーカル曲は2曲(「茜色」「優しい現在」)あるが、BGM鑑賞には含まれていない。曲の出来は普通。セーブやロードしたときの効果音が綺麗で、印象的だった。
女役の声優さんの演技には特に不満なし。甲斐の演技は少し作りすぎな気もしたが、まあ許容範囲かと。
紫陽花 | 成瀬未亜 | 白屈菜 | 草柳順子 |
楓 | 羽間百合恋 | 万年青 | 雪宮あかね |
菫 | 紫苑みやび | 甲斐 | 水野咲 |
瑞樹 | 藤森ゆき奈 | 絵里 | 櫻井ありす |
システム 10/20点
クイックセーブ機能なし。スキップ速度は速めで継続するが、Ctrlスキップとメニュースキップで速度が違う。
画面効果が消去できないのと、エンディングのスタッフロールを毎回飛ばせないのが難点。
エッチ内容について
タイトル | かぎろひ ~勺景~ |
ブランド | Shelf |
発売日 | 2009年02月27日 |
ダウンロード販売 | DLsite FANZA |