あらすじ
哀沢雪斗は、親友の伊能玲矢からの誘いで、自分の姉妹やその友人達を連れ、伊能家が所有する山奥の別荘へ遊びに行くことになった。現実離れした豪邸に感嘆し、休日を満喫する哀沢一行であったが、??が何者かに殺されたことで、状況は一変。崖崩れのために下山できず、警察もすぐには来れないとされる状況下で、彼らの日常は徐々に、しかし確実に壊れていく。
総評 55/200(地雷)
猟奇+寝取られ作品。納期を焦って未完成のままリリースしたのか? 当サイトの立場からすると、そう思えるほどの駄作であった。
シナリオの出来の悪さも大概だが、グラフィックの完成度の低さは特に酷い。このグラフィックに美点があるとすれば、レビュアーがこれを褒める必要性について考慮する手間が省ける、ということだけだ。
シナリオ 10/60点
物語の本筋について
物語の本筋は、ミステリーないしサスペンスに擬態した何かである。犯人が誰かと考える余地を残しておきながら、プロットが幼稚であるゆえに、事件当初から犯人が丸分かりである。いやいやそれは流石にあからさま過ぎるだろう、と疑ってみても、後の展開が進めば進むほど、疑う余地がなくなっていく。
さらに駄目なことに、バッドエンド時のネタバレがある。これは何の嫌がらせだろうか? いやいや、その結末の理不尽さを責めているわけではないのだ。まだ真実のエンディングに到達していないのに、バッドエンドをみるたびに、物語の全容が透けて見えてしまう――館系推理物まがいの構成をとっておきながら、この仕打ちは一体何なのだろうか。
この物語には推理を楽しませるギミックもなければ、犯人が追いつめられていく緊張感もない。初めから分かりきっている全ての謎は、終盤でふと思い出したかのように一挙解決される。また、攻略の進め方次第では、整合性(特に登場人物の心理)が取れなくなる。こんなふうに下らない内容では、物語として純粋に楽しむことは到底出来ない。
寝取られについて
では、寝取られものとしてはどうか。想いを寄せるあの人をあんな奴に寝取られてしまう、それが悔しい、悔しいけど興奮してしまう――そんなマゾヒズムの一種はどう描かれているのか?
結論を言えば、この駄作は、それを実現する巧妙な心理描写で描かれた物語ではない。ここで描かれるのは精神のマゾヒズムではなく、単なる覗き魔の心理、それも圧倒的に不足した筆力で描かれた稚拙なものだ。
私は、当初、それが何らかの心理を描写したものだと認識すらしていなかった。主人公が他人の部屋を覗くつもりはないが覗いてしまう、という設定については、何か抗えない外力が働いているものと最初は考えていた。もしもそれが主人公の本質に由来するものであれば、後々の展開で、説得力のある心理描写が与えられるのだろうと想定していた。
しかし実際には、違っていた。あれで、あんなので、他人の情事を覗かずにはいられないという主人公の本質を描いたつもりらしいのだ。訝しく思いながらも、しかし結局それが事実なのだと認識したとき、いやに冷えた笑いが漏れてきた。
そもそも、この作品は寝取られ物なのだろうか? エロゲにおける「寝取られ」の定義は広く、片思いの相手が主人公以外と肉体関係を持つ場合ですら、「寝取られ」と呼ぶことがある。
そこのところを踏まえた上で、本作は寝取られ物なのかというと、音羽に関してはそうなのかもしれない。主人公と彼女はいちおう両思いの関係にあるし、エロゲ的に拡大解釈するなら、「寝取られ」と呼べなくもない。
しかし、それ以外のヒロインについては、「寝取られ」と呼べるかどうかは疑問である。何故ならば、ヒロインは主人公をある程度好いているものの、主人公自身は(最初のうち)そうでもないからだ。こんな状態で、ヒロインが他人に陵辱されたとしても、私は寝取られ物特有のマゾヒズムを本作から感じ取ることはできない。
エロについて
エロについては、猟奇的で暴力的なものが多い。ヒロインの腹を殴り続けたり、四肢を拘束して電気責めにしたり、首を絞めたり、排泄物を無理やり食わせたりする。極めて過激なものになると……あれはそもそもエロシーンではないような気もするが、サブヒロイン二人を真っ二つに割って、それぞれ半分ずつを鋼線で繋ぎ合わせたものも回想には登録される。
エロテキストの質については、それほど悪くはない。単品で鑑賞するだけなら、そこそこ使えるレベルで書いているのかもしれない。
ただ、後述するように、グラフィックのほうに問題があり過ぎて、通しで鑑賞するぶんにはかなり萎えた(減点せず)。
グラフィック 15/80点
基本CG枚数は、78枚。やや少なめ。
回想は、67本。そのうち私がエロシーンとみなしているのは、61本。その内訳は、音羽×主人公(2)、音羽×他♂1(9)、音羽×他♂2(11)、鈴香×主人公(3)、鈴香×他♂(17)、アニス×主人公(2)、アニス×他♂(11)、ほのか×主人公(2)、ほのか×他♂(2)、琴美×他♂(1)、リナ×リオ(1)となっている。
一枚絵の質は、原画も塗りも商業としてはたいへん稚拙なレベルである。顔立ちや体格の不一致など生易しいものだ。エロシーンでの肌の塗りは下塗りに適当に影をつけたようなものが多くあり、精液の塗りの不統一感は凄まじい。
表情の差分は、かなり少ない。使い回される一枚絵を除いて、CG一枚当たりの差分は通常3~4枚程度である。しかもこれは精液の飛び散る差分を含めたものだから、表情のいやらしい変化なんて見られるわけがない。大して変化しない一枚絵の下に、エロテキストが表示されるだけの紙芝居だ。
一枚絵は、使いどころが非常におかしい。まったく重要ではないシーンに一枚絵が使用されて後、わずか数分のうちに画面から消えるのは良くあることだ。こんなところに無駄に一枚絵を割いておきながら、一番濃厚に描かれるべきところでは、当然のように特定の一枚絵が使い回される。
モザイクは、かなり大雑把。やっつけ仕事にも程がある。
音楽・声優 20/40点
BGMは、15曲。抜きゲーとしてはまあまあな出来だ。ボーカル曲は1曲あって、ゴシックロリータ調。
声優の演技については、日常はさておき、エロシーンにおいて問題がある。ヒロインでは特にアニスの泣き叫ぶ演技の拙さ、男性では特に真岡のヒロインに罵声を浴びせる演技は素人じみている。もっとまともな声を当てて欲しかった……。
音羽 | 澄白キヨカ | 鈴香 | 早乙女綾 |
アニス | 星野みく | 琴美 | 佐倉もも花 |
リナ | 渋谷ひめ | リオ | 神崎ちひろ |
ほのか | 広森なずな | ||
玲矢 | 原田友貴 | 高峰 | 植木亭 |
英二 | こんつ | ナイジェル | こんつ |
真岡 | 島田友樹 | 祐明 | 島田友樹 |
高峰 | 植木亭 |
システム 10/20点
クイックセーブ有り、スキップは高速。ただ、画面の切り替わりや回想の使いづらさ、先時代的なインターフェイスはどうにかしてほしい。
エッチ内容について
作品情報
タイトル | Dark Blue |
ブランド | LiLiM DARKNESS |
発売日 | 2009年11月27日 |
ダウンロード販売 | DLsite FANZA |