スマガ 感想

スマガ

総評 155/200(良)

シナリオの構成美を放棄し、テーマ性と面白さをとことん追求した問題作。しかも、ループものでセカイ系とくれば、激しく人を選ぶのは致し方ない。

良くも悪くも”何でもあり”な展開を受け入れられる方なら、本作品を心から楽しめるだろう。しかし、ご都合主義の連続に堪えられない方は、プレイするのを避けたほうがいい(以下、超長文)。

シナリオ 50/80点

記憶喪失の主人公が何度も死んで、その度に生き返り、魔女や学園の仲間たちとともに『物語』を紡いでいく、という話。何を言っているのか分からないかもしれないが、致命的なネタバレ無しで『スマガ』の概要を説明するのは難しい。具体的なことは、15%体験版をプレイして確認してほしい。

本作品のシナリオは、以下9本立ての構成になっている(※ 反転すると、各ヒロインがどのルートに該当するかが現れます)。

  1. SHE MAY GO(スピカ)
  2. SAD MAD GOOD-BYE(ガーネット)
  3. SHOOT THE MIRACLE GOAL(ミラ)
  4. SARABA MITSU GETSU(沖)
  5. SWEET MEMORY GOES ON(日下部)
  6. SAKURA MAU GAKUEN(スピカ)
  7. SUPER MINE GAME(ガーネット)
  8. SEE THE MAGICAL GOLD-STAR(ミラ)
  9. STAR MINE GIRL(アリデッド)

①~③は固定ルート。④~⑧は個別ルートで、固定ルートを攻略した後にプレイできるようになる。⑨はトゥルーエンドで、④と⑤をクリアすると開放される。

すべてのルートをコンプリートした場合、その総プレイ時間は大体30~40時間程度である。つまりもの凄く時間がかかるので、15%体験版をプレイして受け入れられそうにないなら、購入回避を推奨する。もし「この作品は最後までプレイしなければ良さが分からない」という風評が気がかりなら、それこそ賛否両論の分かれそうな終わり方だといっておこう。

さて、総評 でも述べたが、『スマガ』は激しく人を選ぶ作品である。ここで一方的に褒めたり貶したりしても参考にならないと思うので、以下では良点と欠点に分けてレビューする。

スマガのここが良い!

『スマガ』の良いところは、何といっても世界観やテーマ、キャラクター、そしてエロシーンの良さだろう。

天蓋に覆われ外界から隔離された町――伊都夏市。
その町にある『原型(almagest)』を狙い襲ってくる悪魔(zodiaque)、そしてそれを迎撃する魔女(étoile)たち。
悪魔は魔女にしか倒せない」というこの世界において、伊都夏市民たちの命運は、黄道十二宮(zodiaque)を巡る星々(étoile)に関係する名を持つ、三人の魔女たちにかかっている。

そんな『世界観』のなかで、『物語』は紡がれていく。全9話の『物語』は、ある一貫したテーマを持っている。そのテーマの中身は、最初の1話では分からないものの、2話3話と続けていくうちに、徐々に明らかになっていく。そうして明らかになったヒントを頼りに、「『作者』が何をやらんとしているのか」について推察するのも、本作品の醍醐味の一つである。

『物語』に係わるヒロインたちは、みんな個性的で、魅力的な性格をしている。なかでも、私は沖姫々と日下部雨火が好きだ。
学園祭のメイド喫茶で、ネコミミメイド姿の沖が、「おかえりにゃさいませ、ご主人様」と顔を赤らめながら出迎えたシーンでは、危うく悶死しそうになった。また、日下部の変態っぷりには非常に興奮し、彼女のために犠牲になった御玉杓子は数知れない。

エロシーンは、●●歳未満も事実上の客層となる美少女ゲームにしては頑張ったほう。エロテキストは中の下程度の出来だが、シチュエーション作りがなかなか個性的で良い。実用目的でも十分に”使える”内容だった。

スマガのここがダメ……

以上述べてきたように、『スマガ』のシナリオには褒めるべき点が多々ある。しかしそれでもこのシナリオには、DLdouの『推薦』を意味する55点以上は付けられない。

何故ならばこのシナリオ、最初から最後までご都合主義塗れなのだ。もちろん、DLdouではある程度のご都合主義は許容範囲とみなしているから、多少のそれがあるというだけで減点することはない。が、『スマガ』の場合、ご都合主義を取り除いたら話が成立しないほどご都合主義塗れなのである。

ある人は、「この作品のご都合主義は、後に正当化されるから構わない」という。
確かに、『物語』を進めていけば本作品の趣旨が次第に分かってきて、「ああ、だからあそこでは……」と納得することもある。しかしそれを差し引いても、第1話と第3話のご都合主義は酷すぎる。1~8話までを何とか終わらせ、いざトゥルーエンドへ進んでも、未消化の設定が多くて納得しかねるところがある。

また、『スマガ』の登場人物たちは魅力的ではあるが、彼らの心理について時折訝しく思うことがある。例えば、沖が第1話でスピカとの逃避行を妨害したのは、日頃の彼女の言動からすると、やや矛盾しているように思える。また第1話と第3話とで、スピカの、ガーネットと主人公に対する態度が食い違っているのもおかしい。

ヒロインたちが主人公に恋するまでの過程の描写も、薄っぺらい。ガーネットについては一応納得できなくもないが、その他のヒロインたちとの恋愛描写は、「好きになるのに理由はない」で済ますのと同じくらい酷い。

テキストは、だいぶ中二臭い。そして、それはただ「青臭い」というだけではない。主人公の内心ばかりが勢いに任せて描かれていて、モノのありようとか情景、バトルの描写が薄っぺら。まるで学生の時分に初めて書く小説のような、外界を意識しない独りよがりが鼻につく。
「話の展開が中二病」というのは別に悪いことではないが、それを描くテキストまで中二病なのは問題だ。建前だけでも成年向けを謳うなら、もっと洗練されたテキストが欲しいところである。

グラフィック 60/60点

エロシーンは、合計21本。その内訳は、スピカ(8)、ガーネット(4)、ミラ(2)、沖(3)、日下部(2)、アリデッド(1)、ハーレム(1)となっている。一本のエロシーンは、基本的に複数のエロCGで表現される。基本CG枚数については……ギャラリーの重複が酷いので、数え上げるのはご容赦願いたいorz

この作品のエロCGは、完成度が高すぎて心臓に悪い。例えば、スピカのむっちりした下半身に程よく食い込んだ白ショーツ――その割れ目は俄かに濡れてぷりぷりと、まるで蕨餅のように瑞々しい質感が表現されている。乳房はお椀状の美乳であり、淡い桃色の先端突起がピンと立っている。処女喪失の直後は、ぱっくり開いた膣口から、愛液と精液と血液の混合液がだらだらと零れ落ち――

私は、このエロCGさえあれば金を出せる。だから、次回は是非にこのクオリティで抜きゲーを……と、話が脱線してきたので以下、自重。

なお、本作品はメディ倫審査なので、”性器でない”アナルはもちろん無修正。他の部分の修正も滑らかだ。

音楽・声優 40/40点

BGMは、全43曲。OP・EDの他に挿入歌を含めて、歌は6曲。どれもエロゲにしては異様にクオリティが高い。個人的には、大槻ケンヂの『あくびの戦士がふぁー』がお気に入り。

声優さんは単に上手いだけでなく、演技に個性がある。一度聞けばこの声以外考えられない、というくらいインパクトがある。最高だ。

システム 5/20点

あらゆる動作が妙に重い。
基本システムはデザインにばかり拘って、操作性が悪い。

キーボード対応。メッセージウィンドウは透過できない。選択肢毎にセーブしていると、絶対にセーブ枠が足りなくなる。