魔法の少女シルキーリップ 三人の女王候補 感想

魔法の少女シルキーリップ 三人の女王候補

総評 165/200点(優)

1992年発売のメガCD版+PC Engine版『魔法の少女シルキーリップ』の完全リメイク作品。リメイクである少女編に、エッチ有りのPC版オリジナルの大人編が加わっている。

私はメガCD版の原作をプレイしたことはないが、本作品はかなり出来が良いと思う。実用性だけでなく、ストーリー性もある――いやむしろ、ストーリー性だけでなく実用性もある、というべきか。本作品は、シナリオ、CG、音楽、声優、そのどれをとってもクオリティの高い名作だ。

シナリオ 45/60点

『魔法の少女シルキーリップ 三人の女王候補』のシナリオは、少女編と大人編の二部構成になっている。

少女編は昔ながらの魔法少女モノのオマージュ、大人編は”萌え”ではなく”燃える”ストーリー。どちらも、その道では使い古されたプロットに基づいているが、それだけに安定感のある仕上がりになっている。ご都合主義的な展開は”お約束”の範疇に収まっているので、この手の作品に理解があるなら問題はない。

ストーリー展開は一本の話が連綿と続くのではなくて、アニメのように1話ごとに分割されている。
少女編は全10話(各話数十分程度)。大人編は全11話(少女編の倍程度)で、9話からAパートとBパートに分岐する。大人編のAパートがトゥルーエンド、Bパートがアナザーエンドっぽい構成になっているので、初回プレイではAパート(リップルート)を推奨したい。

少女編

次期魔導女王候補に選ばれたリップは、修行のため人間界に訪れる。そして学園に入学して友達を作ったり、他の女王候補たちと競い合ったりする、というのが少女編のストーリー概要である。

少女編のシナリオは、魔法少女アニメの様式美に満ちている。主人公であるリップが変身するのは当然として、マスコットや魔法の呪文もある。そして、人間界で親友になった大人しい眼鏡っ子、ガキ大将とその取り巻きなど、細かい人間関係にも抜かりはない。

少女編のプロットは魔法少女アニメの王道を行くがゆえに、序盤から終盤まで予測の範疇を超えない。また、リップを含む学園の生徒たちの悩みは、90年代の学園ドラマのそれに似ている。

だから、『魔法の少女シルキーリップ 三人の女王候補』の少女編は、現在の20~30代あたりがストライクゾーンとなる。一方、こうした内容にノスタルジィを感じられない方には、この話は少し退屈かもしれない。

大人編

少女編から何年か後、大人に成長した魔導女王リップが、散り散りになってしまった魔導結晶を回収するため、再び人間界に訪れる。原作に特に思い入れがないなら、本作品の本番はここからだ。

大人編では、少女編で未回収だった伏線や、新たに張られた伏線が一挙に回収される。そこから生まれるカタルシスは、なかなかのもの。また、それだけでなく、大人編はあのほのぼのとした少女編から一変――バトル中心の”熱い”ストーリーが繰り広げられる。

大人編は少女編と違って、みんながみんな幸せになって大団円、ということにはならない。何かを成し遂げるためには、何かを犠牲にしなければならない――主人公たちは、そういう厳しい選択を強いられることになる。そして、その選択はエンディングにもきっちりと反映されている。

すなわち、大人編にはトゥルーエンドだけでなく、悲惨なバッドエンドも用意されている。最近の萌えゲームで流行の、誰もが幸せになるハッピーエンドなんてものは、無い。

このあたりは賛否両論あるだろうが、私はむしろこれでいい、否、これがいいと思っている。もし大人編が少女編の惰性にまかせてハッピーエンドで終わっていたら、私はたぶん、この作品のシナリオの評価を、あと数点は落としていただろう。

わざわざ二部構成にしてまで、ぬるい話を続ける意味なんてないのだ。幸せだった少女編と袂を分けてこそ、この大人編は生きてくる。

エッチ

注意してほしいのは、本作品に少女編のエッチシーンはないということだ。エッチシーンは、三人の元女王候補たちがずいぶんと成長した後の、大人編にしかない。リップが本編中で「10歳」と言い切ってしまっているので、当然といえば当然のことだろう。

大人編のエッチシーンは、諸刃の剣である。各エロシーンはけっこう創意工夫されており、なかなか実用的ではある。しかし、シリアスで熱い戦いの最中に、いちいちエロシーンが入ってくるため、興が殺がれることが間々あった。

CG 70/80点

CGは基本107枚(エロCGは49枚)、エロシーンは26本、変身シーン有。

エロシーンでは差分が不足しているように感じた。というのは、基本CGごとの差分が極端に少ないわけではないが、エロテキストの内容が過激にエスカレートしていく一方、CGがあまり変わり映えしないからだ。

CGそれ自体の出来は、総合的にみれば良好である。テカテカとした魔物の体液に塗れた、ヒロインたちの肢体が何ともエロい。
しかし、身体や顔のバランスが崩れている絵がいくつか見られる。また、精液の描き方がちょっと手抜き気味で、魔物の体液を白く濁らせただけにしか見えない。

魔法戦闘などの演出は、CGを上手く活かしていて、わりと迫力があった。演出用のCGはあまり多いとはいえなかったから、これは本当にすごいと思う。

オープニングソングとエンディングのムービーは、それ用のアニメとイベントCGを合わせて作った、良質のMADといったところだった。

音楽・声優 35/40点

BGMはちゃんと空気を読んでいたし、テキストやCGに合わせて効果的に用いられていた。オープニング・ソングは少女編と大人編で二曲あって、少女編はいかにも魔法少女系、大人編は熱いバトル系の音楽だ。歌い手の歌唱力については、エロゲということを考えれば、大丈夫な程度。

声優さんの演技については、みんな良かった。リップ役は、畳み掛ける台詞や狂った台詞の演技に若干不満があるものの、それ以外では良い演技だったと思う。魔導覇王役とシェリル役については、素直に「良い仕事だった」と言いたい。

システム 15/20点

動作の重い基本システム、セーブ必須なのにクイック機能がない、というのは相変わらず。

それはさておき、本作品の選択肢はたいへん素晴らしい。選択肢に「喜」「怒」「哀」の3種類が用意されており、このうちどれを選ぶかで、リップたちの成績や好感度が上下し、それによって見られるエンディングやエロシーンが左右される。だから、正解と呼べる選択肢は何かを考えながら選ぶわけだが、これがなかなか当てにくい。

最近のエロゲの選択肢は、見ればすぐ正解を見出せるあからさまなものや、何故そういう結果になるのかが不明瞭なものが多い。しかしこの作品の場合、選んだ選択肢からどういう結果が導き出されたとしても、登場人物の性格や状況から考えて納得できることが多い。だから本作品では、本来の意味でのエロゲの『攻略』を楽しめる、というわけだ。

作品情報

タイトル 魔法の少女シルキーリップ 三人の女王候補
ブランド WAFFLE
発売日 2008年3月28日
ダウンロード販売 DLsite DMM
パッケージ通販 Amazon 駿河屋