FifteenHounds

FifteenHounds-フィフティーン・ハウンズ-

非18禁。本作のレビューについては、サークルMUYM様からご依頼をいただきました。

あらすじ

タイムマシンが発明された結果、30年後の未来には3通りの並行世界が発生してしまった。しかし、存在を許される世界はたった一つだけだ。未来の並行世界から現世にやってきた未来人たちは、各々の世界の存亡を賭けて戦い合う。

この戦いの勝利条件は、「鵺」と呼ばれる化物を現世にて倒すことだ。時の管理者である水島家は、この条件を守る証として、水島家の跡取り息子とされる主人公を未来人たちに差し出した。

戦いの最中、主人公の元恋人が、15人の未来人のうち誰かに殺害されてしまう。主人公は状況に流されて三世界のチームの間を行き来しながら、元恋人を殺した犯人をつきとめようと試みる。

総評

一般同人ADVのSFアクション物。頂き物についてこう評するのは申し訳ないし良心の呵責を感じるのだけれども、とても面白くなかった。

なぜ面白くなかったのか? 主な原因としては、(1)アクション物であるにも拘らず常に傍観者ポジションにいる主人公がダメ (2)主人公が元恋人殺しの犯人を見つけたい動機が不明瞭 (3)登場人物が多すぎる弊害がある (4)立ち絵と背景がミスマッチ (5)システムが使いにくい という5つがあげられる。

これらの詳細については後述するとして、まずはそういう原因があることを前提に、総評から述べよう。

本作からは魅力的なアイディアの存在は伝わってくるものの、それを表現する創作技術が全然追いついていない。せめて戦略シミレーションやRPGならばこの世界観や登場人物の多さを活かせたのかもしれないが、1本のADVでやるには辛い内容であった。

(※)以下、ひたすら批判的な内容が続きます。読んでいて面白い内容ではありません。

各評

主人公について

本作の主人公は、大体において、以下のようなスタンスを取っている。

「こんな争い、自分には関係ないから知ったことではない。俺は俺で、元恋人を殺した犯人をつきとめてやる!」

仮にも主人公が、メインの争い事に関心の乏しい傍観者ポジションというのは如何なものか。理不尽な争い事に深く関わりたくない気持ちは分かるが、もはや彼は巻き込まれてしまったのだ。それならば、彼は彼なりに争いを終わらせるよう立ち回ってもらわないと、折角の世界観を活かせないではないか。

主人公の安全は、暗黙の了解で守られている。少なくとも、未来人たちは主人公を殺したりはしない。そんな状況で、いくら周りが派手な超絶バトルを繰り広げていたとしても、主人公目線でそれを楽しむことができるだろうか?
また、主人公は、「元恋人を殺した犯人を見つけ出す」という目的に関係しない物事については、基本無関心なのだ。未来人たちの事情には積極的に立ち入らず、「俺は俺、彼奴らは彼奴ら」という立場で行動している。最も物語に深く関与すべき人物がこんなだから、言わずもがな、物語の全容が見えるまでの展開はグダグダなのである。

この主人公には、どうにも感情移入しにくい。それは、彼が口ばっかりの中二病患者で、しかも自分はチームに甘えてのらりくらりとやり過ごすだけの主体性のない主人公だからというのもある。しかしそれ以上にダメなのは、彼が元恋人殺しの犯人特定に固執している理由について理解しがたいことだ。

主人公は、元恋人が殺される以前、一度は彼女を見捨てて、自分から恋人関係を解消した。それまでの話のなかで、彼は基本的に自己中心的な性格の男として描かれてきた。そんな彼にとって、元恋人はどうでもいい、取るに足らない存在だったはずだ。それなのに、後で元恋人にちょっと助けてもらったからといって、「彼女を殺した奴を必ず見つけ出してやる!」といった心境になるものだろうか? この点について濃い心理描写があれば納得できたかもしれないが、生憎だった。

行動の動機が明確でない人間を理解することは出来ないし、ましてや感情移入なんて無理だ。ストーリー性・キャラクター性重視の作品において、これは致命的な欠点である。

登場人物が多すぎる弊害について

登場人物が多すぎる弊害は、まず登場人物全員の個性が十分に発揮されずに終わってしまいやすいことにある。本作の登場人物たちは、一人一人の「設定」を見れば個性的に思えても、実際には口調や態度がエキセントリックなだけの属性有りきなキャラクターで終わってしまっている。

こういう結果を招いた原因は、数の多さはもちろん、登場人物一人一人の個性に焦点を当てる機会を物語の早い段階で用意できなかったことにもある。そういう機会もないのに、大勢の登場人物を同時に登場させてしまうと、誰に注目していいのか分からなくなる。作者の脳内では登場人物の個性などすでに定着しているに違いないが、読者はそうではないのだ。彼らの個性を印象づける機会がなければ、彼らがどれだけ派手に振舞おうとも、関心を持ちにくい。

登場人物が多すぎる弊害は、それだけにとどまらない。登場人物ごとの台詞を読者が容易に見分けられるように工夫する必要に迫られ、さらには大勢の名前をどうにかして覚えてもらうための仕掛けを作る必要も出てくる。

しかし本作の場合、そのどちらの必要も満たすことが出来ていない。台詞にも地の文にも登場人物の名前があまり出てこない上に、誰が話しているのか分からない台詞の連続が頻繁に発生する。精読するように読めば見分けもつくが、そんな難儀を読者に要求する時点で、娯楽作品としては失当である。

立ち絵と背景がミスマッチ

一枚絵やカットインは、本作唯一の美点だ。もっとも、その出来は物によって差があるけれども、一部の絵には迫力やエロスを感じさせられた。基本的に、首から上だけが映るCGは表情も良くて、出来が良かったと思う。

しかし、立ち絵と背景のミスマッチについては正直見苦しい。背景は実写なのに、立ち絵は流行離れした90年代のアニメキャラのような容姿をしている。実写に合わせるなら、もっと現実味のある容姿をしていないと、強い違和感を覚えてしまう。この違和感が引きずられている間は、どんなに派手な演出があっても、冷めた目でしかそれを鑑賞することができなかった。

システムについて

スキッップで画面効果を飛ばせない。しかもすごく遅い。バックログで遡れるログは少ない。セーブ枠は、自力でやるなら少し足りない。セーブ&ロードは右クリックメニューにまとめられているので、使う手順がとても面倒だった。

作品情報

タイトル FifteenHounds
ブランド MUYM
発売日 2010年02月26日
ダウンロード販売 DLsite DMM