概要と評価
作品のあらすじ
橘木ヤマトと白鳥姉妹は、正退魔師の試練を受けるため、綾神の郷を訪れた。そこでヤマトは何者かの陰謀によって内なる鬼(倭)を呼び起こされてしまう。倭を再び封印すべく、白鳥姉妹と四法院夕は、孕神子として自らの身を差し出す決意をする。
感想の要旨
「孕神子」に志願するか、それとも強制されるかという展開の違いが生み出すギャップはなかなか面白く、エロさも感じられた。しかし、本作は前作までとは違った趣向のようだが、その変更点の悉くがファンの逆鱗に触れるものであったため、駄作という評価は免れない。
エロシーンの属性
異種姦孕ませ、出産重視。前作以上に人間(もしくは人型の妖魔)との絡みが目立っている。近親姦の要素あり。乳房肥大化の人体改造、フタナリ、乳頭責め、スカトロ、電気責め、大量精飲あり。和姦多し。
目次
- 自ら志願して犠牲となるか、それとも強制されるか
- 本作が駄作とみなされる理由
1. 自ら志願して犠牲となるか、それとも強制されるか
『淫妖蟲 悦』は、淫妖蟲シリーズの3作目だ。今回、水依は欠番となっている。前作までのストーリーを前提にした話になっているので、1~2作目を知っていたほうが内容を理解しやすい――が、はっきり言って、そこまで労力を割く価値のあるストーリー性はない。
本作のキーワードとなる「孕神子(はみこ)」とは、妖魔と交尾し仔を孕み、出産することで、その妖魔の仔を使役する巫女のことだ。トゥルールートにおいて、白鳥姉妹と夕は、ヤマトを救うために、自ら孕神子となることを志願する。その場合は明示的な同意があるから、妖魔とのセックスはいくら嫌悪しようと和姦とみなすべきだろう。
逆に、バッドエンドへ至る場合、ヒロインは強制的に孕神子にされてしまう。この場合、彼女達は人間扱いされない。孕神子は妖魔を産み出す苗床であり、その扱いもひどく残酷なものだ。自分の意思で志願したときと比べると雲泥の差で、そのギャップがなかなか面白い。
前作までと今作の大きな違いは、前作までの敵が妖魔だったのに対し、今作では人間が敵だということだろう。ヒロインを孕ませることに一直線な妖魔と違い、人間による孕神子の扱いは下衆な情念がこもっており、これはこれでエロいものだと思う。
エロシーンは、やっていること自体は『淫妖蟲 蝕』の焼き直しだ。今回も妖魔の仔を孕み、出産させることにこだわっている。孕むのは子宮だけでなく、腸や乳頭が孕む場合もある。妖魔出産時に子宮も一緒に引きずり出されたりするなど、ピーキーな異種姦のDNAは、本作にも一応受け継がれているようだ。
しかし実のところ、本作は、淫妖蟲シリーズで最も”ファンの”評判が悪い作品だ。何故かといえば、その要因は以下の点に求められる。
- 彩色の変更
- ボリューム不足
- 和姦比率の上昇
- 効果音の変更
- 無駄に凝った設定
2. 本作が駄作とみなされる理由
前作までと『淫妖蟲 悦』とでは、肌の彩色がだいぶ異なる。前作までは旧世代のギャルゲー塗りだったが、本作は今時のグローな質感に変わっている。前作までの比較的不透明な塗りが好きだったなら、その真逆をいく本作の塗りは受け入れがたいだろう。
出典:TinkerBell『淫妖蟲 蝕 ~凌触島退魔録~』
出典:TinkerBell『淫妖蟲 悦 ~快楽変化退魔録~』
同じようなシチュエーションでも、このくらい違う。
また、前作でもそうだったが、本作でもまた基本CG枚数が減少している。本作のCG枠は61枠あるが、これには前作までの使い回し6枚が含まれるので、実質は55枚だ。フルプライスの抜きゲーは80~90枚程度が普通だが、本作のCG枚数はフルプライスよりもハーフプライスに近い。前作と比べて差分が特別充実しているわけでもないから、これは単なるボリュームダウンだ。
さらに本作では、陵辱的なエロシーンよりも和姦の比率のほうが高いときている。エロシーンは、回想基準で50枠あるが、そのうち少なくとも26枠は和姦である。しかし、TinkerBellは陵辱系ブランドとして認知されており、淫妖蟲は異種姦陵辱系のシリーズだ。和姦の比率がスパイス程度なら良いが、和姦が過半数を占めるというのは、いくら何でもミスマッチが過ぎている。
細かいようだが実は重大なこととして、効果音の変更もあげられるだろう。前作までは妖魔がヒロインの体内を滅茶苦茶に犯すとき、皮を引き裂くような異音が鳴り響いたものだ。しかし本作ではそれが、触手が単に体内を蠢いているとしか解釈できないような音にすり替わっている。そのため、たとえ前作とやっていることが同じくらいハードだとしても、聴覚的にはだいぶソフトに感じられるのだ。
『淫妖蟲 悦』は、このようにファンからみて改悪とみなされても仕方ない変更点を含んでいるので、多くのファンから袋叩きにあい、ゴミのような値段で中古市場に引き取られる作品となった。本作から入った初心者にしてみれば、いまいちピンと来ないかもしれないが、本作がディスられるのには、こうした理由があるわけである。
最後にもう一つダメ出しをすると、無駄な設定を盛り込みすぎたことも大変拙かった。本作には、前作までにはなかった、おそらく後付けと思われる設定が次々と出てくる。
しかし、この設定の山は、ストーリーの面白さに貢献していたとはいえない。ストーリーは主人公達の思惑の外で進行し、主人公達はただただ翻弄されるばかりであった。そして最後は超展開で締めくくられるとなると、今まで面倒なのを我慢しながら読み解いてきた設定の山、あれは何だったのかという苛立ちの念にかられる。しかも、このくだらないストーリーを描くために、55枚しかない新規CGのうち12枚を演出用に割いているのだから、怒りも心頭だ。
所詮『淫妖蟲』はピーキーな異種姦の希少性というただ一点で花咲いたシリーズだから、今更ストーリーに力を入れて、和姦分を急増させても、そんなことは誰にも望まれていないのである。せいぜい「孕神子」というオイシイ設定を活かすことに力を入れていればいいものを、訳の分からない方向性に進化させようとして大失敗を犯したのが、『淫妖蟲 悦』という作品なのだ。
作品情報
タイトル | 淫妖蟲 悦 ~快楽変化退魔録~ |
ブランド | TinkerBell |
発売日 | 2009年11月27日 |
ダウンロード販売 | DLsite FANZA |
パッケージ通販 | Amazon 駿河屋 |