概要と評価 145/200(良)
作品のあらすじ
八神夫婦と哲弥・愛衣のカップルは、学生時代から親しい付き合いがあった。ある日、八神洋樹(主人公)は、哲弥から「愛衣を抱いてほしい」と頼まれる。哲弥と愛衣の関係は良好だが、夜の生活がうまく行っていないことが結婚に踏み切れない理由でもあるようだ。主人公の妻である八神ゆかりが哲弥の頼みをあっさり了承したため、主人公は戸惑いながらも愛衣を抱くことになる。
感想の要旨
スワッピングに特化したシナリオは、主人公が置かれた状況と人間関係等により、もどかしい精神的圧迫感を伝えてくる。エロシーンは、見た目の過激さよりも、ストーリーの文脈を踏まえた精神面の衝撃に重きを置いている。スワッピングや寝取られというテーマに求めているもの次第で、評価が大きく変わってくる作品だ。
エロシーンの属性
スワッピングに特化。アナルセックス、野外プレイ、グループセックスあり。詳しくは「エロシーンについて」の章を参照。
目次
- 主人公と主人公以外の非対称性
- エロシーンについて
- コメント
1. 主人公と主人公以外の非対称性
『交姦の虜たち…』は、スワッピング(二組以上のカップルが互いのパートナーを一時的に交換し、性交に及ぶこと)に特化した作品だ。寝取られ要素もあるが、それはあくまで「スワッピング」というテーマに付随するものだ。「寝取られ」をメインテーマとして追求したシナリオではないことに注意しよう。
本作序盤の展開は性急だ。主人公に自分の恋人を寝取らせたことで興奮しきった哲弥の様子をみて、主人公もまた自分の妻を哲弥に抱かせてみようと考えるまで、そう時間はかからない。ゆかりのほうも、「哲弥の相談に乗る」ことをこれまたあっさりと了承するし、簡単に股を開く。なぜ彼女がそんな態度を取ったのかについては後に判明するが、ここまで話がトントン拍子で進んでしまうため、序盤の世界観は薄っぺらい。
出典:WAFFLE『交姦の虜たち…』パッケージ版
率直に「哲弥に抱かれてみない?」と聞かないところが、この男の限界である。
しかしながら、本作には序盤の不出来をカバーし得るだけの魅力がある。話が面白くなってくるのは、ルート分岐を決める選択以降だ。
哲弥がゆかりに「相談」した後、哲弥は結局ゆかりとセックスしたことを主人公に告げる。しかし主人公は、ゆかりからそのことを聞いていなかった。交換相手とやったことについては後でお互いに報告しあう約束をしたにもかかわらず、ゆかりは哲弥に抱かれたことを夫に告げなかったのだ。
ゆかりはなぜ主人公に報告しなかったのか? 主人公は、それをゆかりに問い質すべきかどうか迷う。そうして散々迷った末、主人公が取った行動によって、本作のメインルートは3つに分岐する。ここでは便宜上、「密会ルート」「告白ルート」「浮気ルート」とそれぞれ呼称しよう。
「密会ルート」に至るのは主人公が問い質さなかった場合であり、「告白ルート」は問い質した場合のルートである。「密会ルート」では、ゆかりの不貞の追求はあえて避け、主人公と哲弥は互いのスワッピングの一部始終をビデオに撮って、後でそれを交換しあう。一方、「告白ルート」では、主人公はゆかりの口から直接聞いて――あるいはゆかり自身が撮影したビデオを観て、哲弥とゆかりがどのように互いの肉体を貪りあったのかを知らされることになる。
出典:同上
記録された真実を目の当たりにし、相当ショックを受ける主人公。
『交姦の虜たち…』の醍醐味は、端的に言えば、主人公と彼以外の非対称性にある。3つのうちどのルートを辿っても、主人公はバランスを欠いた状況に身を置くことになるのだ。
例えば、スワッピングを繰り返すたびに、哲弥と愛衣の仲は良好になっていくが、主人公のほうは違う。彼は、ゆかりに対して罪悪感や焦りを覚えるようになる。また、彼以外は知っていることを、彼自身は知らないか、または気づいていないという美味しい状況がある。
本作のストーリーはこうした非対称性に貫かれており、それがプレイヤーにもどかしい精神的圧迫感をもたらすのだ。さらに、メインルート終了後は「ゆかり視点」と「哲弥視点」のおまけが待っている。「ゆかり視点」は「密会ルート」、「哲弥視点」は「浮気ルート」をそれぞれの視点から描いた内容である。
出典:同上
嘘をついていても、少しも後ろめたい様子がないのが恐ろしい。
さて、ここまでの解説からお察しのことと思うが、貴方の妻であるゆかりは貞淑な妻だとは言いがたい。そのため、典型的な寝取られ作品にありがちな良妻像――貞操観念が強く、夫を誰よりも愛し、彼のために尽くす妻――を本作にも求めて進むなら、それは地雷を踏みに行くようなものだ。逆に、夫を愛していることには違いないが、必ずしも思い通りにはならない妻を愛せるなら、本作を存分に楽しむことができるだろう。
2. エロシーンについて
自分の妻が他人に抱かれるタイプの作品は、最終的にかなりアブノーマルなプレイを行うまでに至る傾向がある。だが、『交姦の虜たち…』の場合はそれほど過激なプレイは行われない。せいぜい野外セックス程度が一番過激なものだろう。
本作の場合は、エロシーンの外観上の過激さではなく、登場人物の精神面にフォーカスして実用性を高める構成になっている。そのため、ストーリーの流れを踏まえずに、エロシーンの回想だけ見ても本作のエロさを充分に堪能することはできない。
主人公が愛衣を抱くにしろ、哲弥がゆかりとまぐわうにしろ、彼らは当初、ちゃんとコンドームを着用している。しかし話が進んでいくと、妻や恋人は生挿入を許すようになり、中出しさえも懇願してしまう場合がある。そして、それは必ずしも本来のパートナーの合意があってのこととは限らない。
出典:同上
アナルバージン、彼氏の前に頂きます。
主人公は、愛衣が哲弥にさえしてあげたことのない行為をどんどん要求していく。そうしてベッドでは大人しかった愛衣は、次第にエッチな娘になっていく。それが哲弥の嫉妬と興奮を煽る。恋人を開発されたお返しとばかりに、哲弥はゆかりと、主人公が普段する以上に濃厚なプレイに及ぶ。その内容はゆかりが口頭で、あるいは内緒のビデオを通じて主人公に伝わり、彼はショックを受けるとともに強い性的興奮も覚える。
出典:同上
そして、カウンター。
エロシーン中に起こる数々の演出も、我々の焦燥や嫉妬を煽ってくる。例えば、哲弥とゆかりのセックスビデオを観ていたら、そのビデオが突然中断してしまう――あるいは、本来のパートナーではない相手を呼び捨てにしてしまう――あるいは、セックス中の会話の流れで、昔の男との情事を詳らかに告白してしまうなど。
出典:同上
君はあくまで二番目だ。少なくとも今は。
本作のエロシーンは、別室型のスワッピングの面白さを充分に引き出している一方で、「もしかすると、このまま最愛のパートナーを寝取られるのでは?」という焦燥感も同時に味わえる内容になっている。また、一部ルートでは同室型のスワッピングも楽しめるようになっている。グループセックスとしてのリアルなスワッピングとはだいぶ趣が異なるが、本作には創作物ならではの面白味が確かに宿っている。
3. コメント
以上長々と評してきたが、未購入者向けに要点をまとめると、こういうことだ。
- 本作をオススメできる
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- 過激なエロシーンよりも、ストーリーの流れを踏まえた精神面でのエロさを味わいたい。
- 一見物分りが良さそうにみえて、思い通りにはならない妻が大好きだ。
- スワッピングも寝取られも好物。
- 本作をオススメできない
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- 話の流れなどどうでも良いので、とにかく過激なエロシーンが観たい。
- 自分に尽くしてくれる良妻が恥じらい、戸惑いながらも堕ちていく様子が見たい。
- スワッピングと寝取られは結局同じカテゴリーだと思うので、完全に寝取られるまでを楽しみたい。
個人的にはとても気に入っているのだが、これが酷評されてもそれは驚くに値しない。それだけ『交姦の虜たち…』という作品は微妙なところを攻めていて、どれだけ褒めても多くの人にとってカテエラとなり得ることは理解できるからだ。
- 総合評価 145/200
- シナリオ 45/60
- グラフィック 55/80
- 音声 30/40
- システム 15/20
作品情報
タイトル | 交姦の虜たち… |
ブランド | WAFFLE |
発売日 | 2016年06月24日 |
ダウンロード販売 | FANZA |
パッケージ通販 | Amazon 駿河屋 |