概要と評価 170/200(優)
作品のあらすじ
『サクリファイス』は、贄となる少女をアイドルに仕立てあげ、誰が先に贄の処女を散らせるかを競う、金持ち達のゲーム。お嬢様の鳳理央はサクリファイスの贄に選ばれ、彼女の幼馴染で想い人の高塚真守はゲストプレイヤーとして招かれた。理央は自分が贄であることを知らず、ルールに縛られた真守も、ゲームの存在を誰かに明かすことはできない。真守は、愛する理央を守るため、ゲームクリアを目指して孤軍奮闘する。
感想の要旨
悲劇のヒロインは処女を散らされ大人になる。ありふれたタイプの寝取られものよりもずっと精神的ダメージの大きい作品だと思う。
エロシーンの属性
強姦または準強姦多め。悲惨なシチュエーションが目立つ。イラマチオ、アナルセックス、妊娠セックス、輪姦あり。詳しくは「エロシーンについて」を参照。
目次
- 贄の少女の暗い未来
- 乙女心が悲劇を生み、悲劇が彼女を大人にする
- エロシーンについて
- コメント
1. 贄の少女の暗い未来
『Dearest Blue』は、スタンダードな寝取られもののようでいて、実際はより発展的な作品だ。通常の寝取られものでは、ヒロインは間男によって快楽を仕込まれ、身も心も堕ちてしまうか、もしくは「肉体は差し出しても、心は貴方だけのもの」という幕引きに至る場合が多い。本作は後者の類型に比重を置いており、それぞれの結末はとても残酷なテーマに貫かれている[後述]。
『Dearest Blue』の主役である真守と理央は、家柄、本人の能力ともに申し分ない男女だ。しかし彼らはまだ子供で、年齢相応の不器用さを心の中に持っている。真守のほうは理央のことが好きすぎて、彼女の危機に際して暴走しがちだ。一方、理央はしっかり者ではあるものの乙女な性格をしており、大好きな真守に対してだけは甘えと期待が過ぎてしまう。”サクリファイス”においては、真守と理央のそんなところが互いのすれ違いを生み、ただでさえ不公平なゲームをさらに不利へと導いていく。
出典:LiLiM DARKNESS『Dearest Blue』パッケージ版
二人の溝が深まり、どんどん勝利条件から遠のいていく。
“サクリファイス”のプレイヤーたちは、ゲストの真守を除けば極めつけのゲス揃いだ。特に、理央の義父である鳳悟志はヤバい。彼こそが自分の義娘をゲームの贄として捧げた張本人だからだ。しかも自分がゲームに勝利することを疑っておらず、勝利した暁には理央を犬のように飼うつもりでいる。他の連中も似たようなことを考えているため、真守以外が勝利した場合、理央の将来はきっと滅茶苦茶になってしまうだろう。
出典:同上
悟志の目論見を知っていると、とても含蓄のあるお言葉。
だから、あなたは、そのような未来を迎え入れるために、真守が理央を守りきれないような選択をし続ける必要がある。そうすると、理央とプレイヤーたちは、あなたを間違いなく最低な気分にさせてくれるだろう。『Dearest Blue』の多様なバッドエンディングが与える衝撃は心まで響くので、理央のグッドエンディングは最後の精神安定剤代わりに取っておくといい。
2. 乙女心が悲劇を生み、悲劇が彼女を大人にする
『Dearest Blue』では、理央の乙女心が悲劇を引き起こし、その悲劇によって彼女はいろんな意味で大人になる。子供と大人を隔てる決定的なものは、年齢ではなく、責任の重さである。理央が自分の過ちに気づいたとき、彼女の肩にはとても一人では背負いきれないほどの責任が重くのしかかっている。その責任の重さによって、理央は大人にならざるを得なくなるのだ。
出典:同上
理央はいつまで子供のままでいられるだろうか?
その意味で、『Dearest Blue』は、「一人の乙女が悲劇の責任を背負い、悪い意味で大人になる物語」だということもできる。理央が大人になる動機は、ルートによって異なる。愛するひとを守るため、あるいは贖罪のためということもあれば、半ば自己保身のためということもある。お先真っ暗な将来を悲観し、自暴自棄になることもある。しかし、いずれにせよ、理央に残されたたった一つのエンディングを除けば、彼女がろくな目にあうことはないのだ。
一方、理央を守ろうと孤軍奮闘した真守も、大抵の場合は彼女以上にろくな目に合わない。『Dearest Blue』には10個のエンディングがあるが、私の心を最も深く突き刺したのは「義務としての愛」をテーマに描かれた幾つかのエンディングだ。
これについて語ろうとすると何を書いても核心的なネタバレになるから言及は避けるが、それらの結末はほんとうにむごいので、精神的に打たれ弱い方は注意してほしい。少なくとも、ビッチ化したヒロインから「あなたのチンポじゃ満足できないのんほぉお♥」などと罵られるより、よほど心を抉られるものがあるだろう。
3. エロシーンについて
『Dearest Blue』のエロシーンは、サクリファイスのルールからすると意外なことに、強姦が多い。というのも、確かにゲームの勝利条件は理央から求められたうえで処女を散らせることだが、理央に「して欲しい」と言わせる手段に制限はないからだ。作中では「強姦NG」とか何とか言っているが、クスリ、暴力、脅迫、監禁その他何でもありの性交なんてレイプ(または準強姦)に決まっているだろう。ただし、真守と剣崎のエロシーンについては、ほとんどの場合は和姦になっている。
以下のリストでは、ルート別に理央が犯される状況や、エロシーンの一部について簡単に触れている。
- 真守:ほとんど和姦。フェラ、パイズリフェラ、シックスナイン、野外セックス、素股など。
- 鳳:眠姦または飼い犬調教。呼称は「ご主人様」。おはよう陵辱、イラマチオ、アナルセックス、臨月ファックなど。
- 剣崎:ほとんど和姦。フェラ、母乳を吸われながら手コキ、妊娠セックスなど。
- 秋津川:媚薬を使った陵辱、隷属化、枕営業強要。呼称は「ご主人様」。理央の脇汗舐め、秋津川の肛門を舐めさせる、輪姦など。
- 梶原:ドラッグ使用調教。拘束セックス、輪姦など。
- 哀田:スタンガンを用いて強姦。イラマチオ、強制パイズリ、濡らさず挿入など。
乃亜については、エロシーンの数は理央の約6分の1だ。真守と結ばれるか、真守の前で秋津川に調教されるかという2つのルートがある。
4. コメント
レビュー本文では触れなかったが、作品の趣旨からするともう少し和姦によって落としに来たほうがいいとか、使われている卑語があまりシリアスな内容に似つかわしくないとか、細かい部分で不満のある作品ではあった。が、寝取られものとして話の大筋はとても良く出来ていたし、フルボイスの男性台詞も憎たらしさが抜群だったので、トータルではたいへん素晴らしい作品だと思う。特に剣崎END(2)については、寝取られゲーとして久々に心を震わせられる内容だった。
- 総合評価 170/200
- シナリオ 50/60
- グラフィック 65/80
- 音声 40/40
- システム 15/20
作品情報
タイトル | Dearest Blue |
ブランド | LiLiM DARKNESS |
発売日 | 2016年05月27日 |
ダウンロード販売 | FANZA |
パッケージ通販 | Amazon 駿河屋 |