レビュー 90/200(不可)
主人公は教師で、重度の水着フェチ。ある夏、いろいろあって3人の教え子たちと海の家を手伝うことなった。主人公に想いをいだく彼女たちは、主人公を襲った末に処女を捧げるが……。
本作のプレイを開始するといきなり、「こんな感じで処女を奪っちゃいました」と言わんばかりに、一枚絵つきで処女喪失シーンを軽くネタばらし。かつてない斬新な演出法に驚いた私は、「まさか気づかずにOPを飛ばしてしまったのか」と、タイトルへ戻って確認。しかし、おかしいのは私の頭ではなかったことを知り、ホッと息をつくのだった。
振り返ってみれば、本作には何度も溜息をつかされたものだ。
制作者の脳内補完により極限まで省略されたストーリー展開は芸術的だ。凡庸な頭では流れが把握しにくい程に洗練されたテキストを解読していくと、初夏にダイヤモンドダストを幻視させるコメディの数々に魅せられた。
溜息が出るのは、日常イベントの一つ一つが終わるタイミングだ。省略不可のアイキャッチに5秒程魅せられて、その間に息を吐くのだ。
ヒロイン1人を攻略した後には、この機会はさらに増えるだろう。何故ならば、3回のヒロイン選択はED条件には関係しているが、ルートそのものが大きく分かれるわけではないからである。選択肢後のエロシーン1本を観た後は、(ED以外)ほぼ同じシーンが続く。その間のアイキャッチも、もちろん省略することはできない。それもこれも皆、本作の優れたストーリーテリングによって、うっかりプレイヤーの呼吸を止めてしまわないための制作者の配慮であろう。
これらの要素だけでも、本作はLiLiTH史上に残る作品となりえたはずだ。しかし、本作の制作者は、この程度では満足しきれなかった。彼らが用意した真のLiLiTH作品となるための決定的要素――それはエロシーンだったのだ。
本作のエロシーンは、非常に挑戦的である。場所は海の家、水着特化というだけならばよくある内容だが、本作が凄いのは、“水着だけど屋内でセックスする”シーンが大量だということだ。凡庸な人間の理解では、この状況設定では水着と海辺は不可分なものだが、本作ではそれらをあえて分離する。水着を着る必然性のないところで水着を着てまぐわう、ということに価値を置く。
なんというフェティシズムの芸術的表現だろうか? 海辺に水着、という既存のイメージを否定し、通常はただのコスプレイと見なされがちなシチュエーションこそを真とする。話の流れなどお構いなしに、不自然なタイミングでエロシーンに入るのは、既成概念や論理性に囚われてはならないッ! という制作者のメッセージではないか。毎回のエロシーンのBGMがクライマックスの直後のような印象であるのは、今この瞬間でイけッ! という、抜きどころの分からない初心者への教示ではないのか。
もはやこれ以上、本作の価値が既存のLiLiTH作品をあらゆる意味で超越していることについて、言葉を尽くす必要はないだろう。DLdouにおける本作の評点は、LiLiTH史上初の90点だ。さすがに100点に届くことはなかったが、もっとストーリーやグラフィックや音声やシステムが良ければ、簡単に手の届く評点ではあったと擁護しておきたい。
- 総合評価 90/200点
- シナリオ 0/60点
- グラフィック 55/80点
- 音声 25/40点
- システム 10/20点
作品情報
タイトル | 水着のシモベくん♪~処女に襲われる海の家~ |
ブランド | Lilith |
発売日 | 2013年06月22日 |
ダウンロード販売 | DLsite FANZA |
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