※この作品は一本道シナリオなので、攻略記事は作成していません。
概要と評価 110/200(可)
作品のあらすじ
ロイの村はイクス率いる盗賊団に蹂躙され、家族は辱められた末に殺された。ロイはイクスの妻であるハミロの性奴となり、青年に成長してからも面従腹背を貫いていた。ロイはハミロのお気に入りとして伽を担いながらも、盗賊団に復讐する機会を窺っていたが……。
感想の要旨
この作品が復讐物として駄目なのはシナリオのせいであり、リョナ系エロゲーとして駄目なのもシナリオのせいである。
エロシーンの属性
リョナ重視、ただし和姦もあり。輪姦・乱交が多め。
目次
- この作品が復讐物として駄作である理由(ネタバレ)
- この作品がリョナとして駄作である理由
- コメント
この作品が復讐物として駄作である理由(ネタバレ)
『略奪者の淫宴』は、盗賊団に家族を殺された少年による復讐を描いた作品だ。しかし、実際の中身は羊頭狗肉であり、復讐物としては稀に見る駄作といっていい。この作品を腐らせている一番の原因は、中盤以降の「草」を巡るストーリーにある。
少年ロイは家族を殺された後、盗賊団長の妻ハミロの性奴として尽くすと同時に、盗賊団の戦士として略奪行為に手を貸していた。ロイがそうせざるを得ないのは、成長した彼の力を持ってしても、団長のイクスを倒すにはいまだ至らないからだ。イクスやハミロは、ロイの敵愾心に気づいてはいるものの、そのほうが面白いので彼を放置していた。
出典:あかべぇそふとすりぃ『略奪者の淫宴』
ロイも強くなったが、イクスはそれ以上に強い。
そんなある日、盗賊団は略奪先の村で、とある「草」を入手する。その「草」を燻した煙には強力な催淫効果があり、しかも依存性が極めて高かった。
「草」の依存性を知らなかった盗賊団は、ロイとイクスとメイシアを除く全員が、「草」に依存していくことになる。依存症にかかる者にはあのハミロさえも含まれており、「草」のせいで、もともと荒れていた盗賊団はさらに無秩序となり、次第に瓦解していく。
出典:同上
「草」の催淫効果で、あのプライドの高いハミロもご覧の有様。
盗賊団が「草」に依存した状況は、復讐を狙うロイにとって好都合に思えるが、しかし彼にこの状況で直ちに復讐を行う考えはなかった。ロイが行動に出たのは、ハミロがメイシア(ロイの事実上の恋人)に「草」を与えて、正気を失った彼女を壊れるまで陵辱したからだ。
それでロイはハミロを殺し、なし崩し的に盗賊団の男たちを殺してまわる。そうして最終的にイクスをも殺してしまうわけだ。
しかしこの展開について、制作者は何か重要な設定を忘れていないだろうか?ーーそう。家族を無残に殺されたロイが、今まで復讐をしなかったのはなぜか、ということを、だ。
なぜ、あれほど慎重だったロイがまだ勝てないと考えていた男を、恋人を殺されて激昂したくらいで倒せてしまうのだろうか。しかも、ロイは無策のままイクスと遭遇し、正面から1対1で打ち勝っている。こうなると、ロイのこれまでの面従腹背の日々は何だったのか、ということになる。
また、復讐対象のイクス自身、自分を含む盗賊団が壊されていくのを心待ちにしていたという節がある。イクスは破滅願望の持ち主なので、自分が壊されることはむしろご褒美なのだ。こんな奴を普通に殺したところで、復讐のカタルシスなど生じるはずがないのである。
出典:同上
自分がまとめ上げてきた組織が壊れるのも、また一興という価値観。
さらにダメ出しすると、ロイの復讐が状況に流されるままに達成されてしまった、という展開がまずかった。復讐のカタルシスは、復讐者が自分の意思で目的を遂げることから生じるのだから、成り行きで復讐を遂げてしまう展開など、本来あってはならないのだ。
復讐を見守る私の次第に冷めていく感情とは反対に、妙にテンションの高い復讐戦のBGMは空々しく聞こえた。そして復讐が成し遂げられた後、「復讐は虚しいだけで何も生み出さない」という類の、あのお定まりの教訓が敷衍されることになった。
私も、前述の一部文言をすり替えればその通りだと思う。この作品のシナリオをまともに読んだところで虚しいだけで、本当の駄作は、それに対して苛立ちさえも生み出さないのだから。ただ、こんなのに足を引っ張られて価値を貶められる、シナリオ以外のすべてが気の毒に思うだけだ。
この作品がリョナとして駄作である理由
『略奪者の淫宴』のストーリーは負の評点を差し上げたいほどの出来栄えだったが、エロテキストも負けず劣らずの出来であった。本作のエロゲーとしてのテーマは「リョナ」だが、その観点からみて、本作のテキストはあまりにも”軽すぎる”。
リョナとは、相手が痛めつけられるのをみて興奮する性的嗜好のことだ。そうである以上、エロシーンは痛々しさに焦点を当てて描かれなければならない。にもかかわらず、本作のエロテキストは悲鳴などの脊髄反射的な台詞ばかり並べたて、地の文などでその情景を生々しく伝えることを半ば放棄している。
絵の効果だけでそれを表現できるならいいが、本作の基本CGやCG差分は、あくまで相場程度の枚数しか用意されていない。この価格相応のビジュアルでは、犯される女の痛々しさを充分に伝えるには至らず、だからこそテキストのほうで仕事をすべきなのだが、それが出来ていない。
出典:同上
全22本のエロシーン中、10本はモブ。
さらに言えば、メイシアとハミロ以外の犯される女たちは、話のなかでほとんどキャラ立てされていない。ロイの母親と姉なんて、プロローグでちょっと顔を見せただけの存在が無残に犯されても、大した感慨を覚えることはない。しかしそれでも、本作においてはロイの家族の扱いはまだいいほうで、その他の女たちなんて名無しのモブ扱いであるから話にならない。
また、本作のエロシーンは、尺が短すぎるものが目立つ。短いエロシーンは不完全燃焼に終わり、女たちが壊されていくのを最後まで描かないエロシーンもある。それに対し、比較的尺が長くて使用CG枚数も多いエロシーンが和姦であるあたりが、制作者の無理解を思い知らせてくれる。
コメント
同じブランドから『手垢塗れの天使』という正真正銘の傑作が生み出された年に、まさか『略奪者の淫宴』という駄作が市場に投棄されるとは思わなかった。シナリオ以外にはさほど不満がないぶん、シナリオの極まったひどさが際立っている。
- 総合評価 110/200点
- シナリオ 0/60点
- グラフィック 60/80点
- 音声 30/40点
- システム 20/20点
作品情報
タイトル | 略奪者の淫宴 |
ブランド | あかべぇそふとすりぃ |
発売日 | 2016年11月25日 |
ダウンロード販売 | FANZA |
パッケージ通販 | Amazon 駿河屋 |