総評 115/200(可)
多くのヒロインを輪姦し、精液塗れにするエロシーンの詰め合わせのような作品。ストーリー展開とテキストは駄目駄目、一部声優の演技も×。しかし一枚絵の出来はとても良く、エロの内容も凝っているので、実用性それ自体は決して低くない。
完璧を求めるなら本作は駄作に違いないが、後述する数々の欠点に目を瞑れるなら、長期の実用にもたえ得るだろう。
シナリオ 10/60点
ストーリーは、エロのおまけといっていい出来だ。世界観はダイジェストに語られ、砦攻略戦の経緯もかなり端折って描かれる。序盤は、「攻略する砦の選択→調略済みのキーマン登場→彼の要望を聞くか否か→砦攻略戦→下っ端を捕らえ、陵辱→ヒロインを捕らえ、陵辱」のループを7回繰り返すだけで、非常につまらない。
それから中盤以降、捕らえたヒロインは公共娼婦として一晩を競売にかけられ、不本意にも客を取らされるのだが、この通常奉仕がヒロイン1人当たり2回しかない。しかもヒロイン全員を1回ずつ奉仕させないと、2回目の奉仕を実行できないので、選択肢の存在など無意味であり、むしろあるだけ邪魔になっている。ヒロイン全員の通常奉仕を1巡させるごとに「懲罰」とよばれる個別イベントを閲覧できるが、これも合計2回しかないので、ヒロイン1人当たりのイベント数はやはり少ない。
その一方で、立ち絵すらないゲストの陵辱イベントが9本もある。この数は、全体の1割に相当する。ただ、これらはプロット上必要なイベントばかりなので、そのイベントの存在自体は否定しない。だが、このために肝心のヒロイン達のイベント数が割を食っているのだとしたら、それはそれで気に入らないことだ。
エロシーンにおけるテキストは、だいぶ出来が悪い。例えば、
肉の喜びを知りながらも、同時に、本当の快絶を知らない初心な人妻の肉体が、次第に、否応なしに舅のペニスに感じ身もだえていく。
だが、同時に、張り詰めたクラウディアの精神は、感じたくない、声をあげたくないと叫び、必死に歯を食いしばる。
こんな具合に、中身の薄いテキストを冗長に引き伸ばした駄文が、延々と続く。過剰な読点の打ち方といい、無駄な修辞の用い方といい、『聖奴隷学園』の稚拙なテキストに通じるものを感じる。
エンディングを網羅するための攻略は、苦行である。懲罰では2回とも同じヒロインを選択しなければ、個別または全員一緒のエンディングを観ることができない。したがって、全てのエンディングを観るためには、どれだけ合理的にやっても、第1巡目懲罰+第2巡目以降を10周する必要がある。本作のヒロインは9人だから、つまり、9種類の同じイベントを最低10回ずつ拝まされるというわけだ。
これは何の嫌がらせか? 嫌がらせ以外の理由をもって、こんなクソみたいなフラグ構成を採用できるものなのか。攻略チャートを作成し終わった直後、Liquidに対する私の感情は限りなく憎悪に近いものだった(※チャート作成者は、正誤確認のため2回以上コンプリートする必要が……)。先述の欠点も相俟って、そのままの気分でレビューしていれば、0点をつける勢いだ。
しかし実際のところ、本作は0点をつけられてはいない。10点である。いったい何が10点を死守したのかといえば、それは実用性の高さだ。もっとも、その実用性の高さとはテキストの質から来るものではない。およそLiquidの正規ユーザーが期待するだろう数々のエロシーンを、ちょうど上手い具合に詰め込んだ、そのあざといバランス感覚の産物である。
本作の各ヒロインごとの陵辱ポイントは、それぞれ以下のようになっている。
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本作全体のエロには、「輪姦されて、精液塗れにされる」という一貫したコンセプトの存在を見い出せる。それでいて、各ヒロイン個別のエロシーンだけを見れば、1つのコンセプトのもとでさらに差別化されていることが分かる。しかもそれらは、ユーザーごとに異なるであろう様々な性癖を可能な限り網羅した上で、実現されている。
これは、実は凄いことだと思う。
陵辱ゲーというジャンルには、多くのユーザーの性癖に報いようとすると、たちまち全体の統一感を失ってしまいやすいという儘ならない性質がある。ある性癖を持つユーザーにとって別の性癖を受け入れられるとは限らないから、下手に組み合わせると破綻するのは自明のことだ。毎度「広く、程々に深く」を狙って失敗する有名ブランドを一つ知っているが、性癖間の親和性を上手に図れないと、あれと同じ轍を踏むわけである。
それに対し、本作は、個別のエロシーンで様々な性癖に対応しながらも、1つのコンセプトのもとで統一感を維持している。もっとも、途中やや欲張りすぎて一貫性を感じられないこともあるが、最終的にはそれらがエンディングでかみ合うように作られている。例えば、クラウディアは養父以外にも犯されてしまうので、一時的には一貫性を欠くように思えるが、最後には誰の子を孕んだか分からない、知らぬは養父だけで……というエンディングでちゃんとかみ合っている。
こういうエンディングも視野に入れて、各ヒロインの陵辱劇にちゃんとオチがつけられているのも、本作の美点だと思う。少なくとも、全体のエロの統一感・バランスの良さ、ヒロインごとの差別化、エンディングの3点については評価できる。しかし悲しいことに、序盤~中盤にかけてのプロット、テキスト、フラグ構成については大きく減点せざるを得ないので、本作のシナリオの全体評価としては10点だ。
グラフィック 75/80点
基本CG枚数は、105枚(うち10枚は非エロ)。抜きゲーとしてはかなりのボリュームだ。また、基本だけでなく、差分もかなり豊富である。
回想はすべてエロシーンで91本。その内訳は、オリガ(9)、クロエ(8)、アリシア(10)、プリム(8)、カグヤ(8)、マイア(8)、ルー・ルー(8)、クラウディア(7)、セレスティン(10)、ヴィヴィアン(1)、トリス(1)、マリィ(1)、
オリガ+クロエ(1)、アリシア+プリム(2)、メル+村娘達(1)、修道女達(1)、巫女達(1)、ハーフリング達(1)、女騎士達(1)、女神官達(1)、ヒロイン全員(3)となっている。
日陰影次さん原画の一枚絵は、『聖奴隷女教師』や『聖奴隷学園』で拝見した頃よりも、ずっと安定感を増している。少なくとも『聖奴隷学園』の頃の角張ったような印象は抜け落ちて、柔らかな女体の艶や肉感を感じさせられる。安易に分かりやすいアヘ顔に頼らない、微妙な表情のエロさにも好感が持てる。
モザイク修正は、EOCS審査ならだいぶ頑張ったほうだろう。FANZAのサンプル画像と同程度なので、そちらで確認してほしい。
音楽・声優 25/40点
9人いるヒロインの演技については、オリガ役以外は良好。オリガ役は、日常演技はともかく、エロでは安定していなくてやや不自然に聞こえる。とはいえ、ストーリーが進んで彼女の内心に変化がみられるようになるにつれ、違和感は徐々に小さくなっていった。
輪姦されるためだけに登場するゲスト役の演技については、あまり上手でない。やり捨てとはいえ、もう少しまともな声をあてて欲しかった。
オリガ | 葵時緒 | クロエ | とりきんぐ |
アリシア | 桃井いちご | プリム | 佐倉もも花 |
カグヤ | 倉田まりや | ルー・ルー | 青葉りんご |
マイア | 葉村夏緒 | クラウディア | 御苑生メイ |
セレスティン | 羽高なる |
システム 5/20点
システムについては、これほどバックグランド動作不可能であることに苛立たされたのは久しぶりだ。何度も繰り返しプレイさせられることが前提なのに、なぜスキップが継続しないだけでなく、バックグラウンドで動作させることもできないのか。セーブ&ロードが右クリックからのメニューに一括されているのも、相変わらず使いづらい。バックログは閲覧できるログが短すぎる。
エッチ内容について
作品情報
タイトル | 黒獣 ~気高き聖女は白濁に染まる~ |
ブランド | Liquid |
発売日 | 2010年4月23日 |
ダウンロード販売 | DLsite FANZA |
パッケージ通販 | Amazon 駿河屋 |