概要と評価 75/100(良)
本作のあらすじ
主人公(壮太)はサッカー少年だったが、膝の故障により早期復帰は望めない状況にあった。壮太には可愛らしい彼女(未弥)がいたが、ある日の保健室で、彼は同級生のよく知らない女子(透)と浮気してしまう。
感想の要旨
ストーリーがとても興味深い。エロシーンは、プレイヤーの心を抉りにくる。万人受けはしそうにないが、あえて布教したくなる作品だ。
エロシーンの属性
主に男性被虐。いろいろとショッキングなシーンもあるので、デリケートな性癖を持っている方は注意しよう(詳しくは「エロシーン」の項目を程々に読んでほしい)。
目次
1. ストーリー解説
1-1. 対比構造
1-2. ヒロインの共通点
1-3. タイトルの解釈(重大なネタバレを含む)
2. ストーリーに関する不満点
3. エロシーン(伏字は重大なネタバレ)
4. 総評
1. ストーリー解説
本編の最初から最後まで、ストーリーに引き込まれた。
テキストはやや読みづらいし、伏線の意図も掴みづらい。
しかし、それでも興味を惹かれる内容だった。
こんな同人作品は久しぶりだ。
1-1. 対比構造
本作のストーリーは、様々な要素が対比構造を取っている。
学園の気怠い日常と、保健室の淫らな非日常。
全力で好意を注ぐ彼女と、恋愛感情のない浮気相手。
部活動に励むかつての仲間達と、窓辺からそれを眺める自分。
そうした対比には、何らかの象徴的アイテムが介在していることがある。
それら(ブリーフ、松葉杖)を探して読めば、より面白く読めると思う。
各々の対比要素は、序盤では別け隔てられたものだった。
それが、透と浮気を重ねるたびに、グチャグチャに掻き回されていく。
透は、おそらくは壮太と浮気する理由について、最初にこう語っている。
透 「面白いと思わない? 一台が遅いせい、たったそれだけでちょっとした規模の渋滞なら簡単にできてしまって、何人もの人に影響を与えるの」
(中略)
透 「そういう些細で重要で、ずっと囚われてしまうような一撃を誰かにもたらすことが今の私の人生の目標」
なかなかイカれた話だが、これこそが透の目的で、彼女は実際に行動に出る。
「透とのセックス」という一撃が、壮太の今後のすべてに影響を及ぼす。
そうして対比された構造も変化、ないし崩壊していく。
1-2. ヒロインの共通点
未弥と透は、一見まったく異なるタイプのヒロインだ。
未弥はまだ処女の恋人で、透は経験豊富らしいセフレ。
未弥がマゾの性質をにおわせるのに対し、透はどう見てもドS。
未弥は相手の顔色を伺うが、透はむしろ相手の心を土足で踏みにじる。
ほとんどの性質が対比された未弥と透だが、実は1つだけ共通点を持っている。
それは、どちらも自分の心の深い部分に相手を立ち入らせていない、ということだ。
透は壮太の心を踏み荒らしても、彼と心から通じ合おうとは思っていない。
未弥は壮太に献身しても、なぜ彼なのか、という動機は隠したままだ。
本作のストーリーを追うときは、この共通点に着目すると興味深く読めるだろう。
1-3. タイトルの解釈(重大なネタバレを含む)
『純情セックスフレンド』というタイトルは、
一見、本編の内容とそぐわないように思える。
しかしこれは、ひょっとすると、ミスリードを意図的に狙っているのかもしれない。
本編中では”何をもって”純情とするのか、必ずしも明らかではない。
それどころか、”誰が”タイトルにいうセックスフレンドなのかも解釈の余地がある。
そのため、タイトルの意味については、プレイヤーによって様々な解釈があり得る。
私は、クリア後の『結実』を観て、もしかして『純情セックスフレンド』とは、
実は透ではなくて未弥を指しているのではないか、という解釈に至った。
未弥は、元彼氏への想いを捨てられず、
元彼氏と同じ立場になるために処女を捨てた。
すでに彼氏でない彼のために、彼の隣で腰を振る未弥を見ていると、
彼のためにそこまで出来る彼女の想いこそが『純情』なのだ、と思えた。
そして、その他人を媒介にしたセックスを通じた、
触れ合わない距離感での関係こそが『セックスフレンド』なのではないかと。
もっとも、だからといって、透が純情なセックスフレンドと言えないわけではない。
彼女の「最初の一撃」に対する執着は『純情』と解釈できなくもないし、
彼女がセックスフレンドであること自体は間違いないからだ。
あるいは、双方ともに『純情セックスフレンド』なのかもしれない。
何にせよ、様々な解釈が成り立つことは、妄想できる幅が広くて楽しいものだ。
2. ストーリーに関する不満点
『結実』におけるテキストの視点が、どこの誰とも知れないオヤジなのが不満だ。
ここは、未弥視点で彼女の内心をきっちり描くべきだったと思う。
本編中ではMOBと大差ないオヤジの視点では、
『結実』がただのおまけエロシーン集のように読めてしまう。
また、透のバックグラウンドがほとんど明らかにされないのも不満だ。
もっとも、この謎めいた少女の謎を明らかにすることには、賛否両論あるだろう。
しかし私は、全部ではないにしても、もう少しだけ彼女のことを知りたかった。
透が私にとって魅力的なヒロインだったからこそ、知りたいのだ。
とぼしい材料から、憶測で彼女の内心をはかるだけでは物足りない。
3. エロシーン(伏字は重大なネタバレ)
透とのエロシーンは、基本的に壮太の被虐だ。
壮太は、恭順の証としてブリーフを履かされ、屈辱的なプレイを受ける。
しかし、それを拒むことができないわけではない。
あくまで壮太の意思に委ねられているのがエグいところだ。
透は自分を壮太に抱かせているときも、常に彼と心の距離をおく。
透 「ほら、私のことを彼女だと思って頑張って練習しよ?」
などと語り、あくまで自分は壮太を恋愛対象と認めていない、
自分の心もからだも壮太のものではない、という意思を暗に伝えている。
その意思が現れた最も極端なプレイとして、
自分が汚いオヤジに抱かれている姿を彼にみせる、というプレイがある。
未弥のエロシーンは、本編と結実とで相手が違う。
本編では主に壮太との純愛プレイだが、
結実では(半ば同意の上で)オヤジに陵辱される。
4. 総評
作品内容を一見しただけでは、どうしてもチープな印象がある。一枚絵の完成度はあまり高いとは言えないし、音声には時折ブレスノイズ等の雑音が入り、マイクの存在を意識させられる。システムは貧弱で、決して使いやすくはない。
しかし、シナリオの完成度は抜きん出て高い。声優さんの演技やBGM演出も満足できるものだった。夜のひつじの今後に期待したい。
- 総合評価 75/100点
- シナリオ 25/30点
- グラフィック 20/30点
- 音声 20/20点
- システム 10/20点
作品情報
タイトル | 純情セックスフレンド |
ブランド | 夜のひつじ |
発売日 | 2012年12月31日 |
ダウンロード販売 | DLsite FANZA |