感想と評価 115/200(可)
“対魔忍”ゆきかぜは凛子先輩とともに、ゆきかぜの母である不知火救出の任務に志願した。この任務遂行のためには娼婦に化ける必要があり、娼館で客を取ることも覚悟しなければならない。そこで前夜、二人は想い人の達郎(凛子の弟)に処女を捧げようとするものの、躊躇してしまう。こうして二人は処女のまま、奴隷商人に連れられて、闇の無法都市”ヨミハラ”に潜入することになった。
対魔忍シリーズのスピンオフ作品。前作までのヒロインも登場するが、それは顔見せ程度。ストーリー上の繋がりは薄いので、本作がシリーズ初プレイでも問題ない。
ストーリー展開はかなり強引で、セールスポイントの寝取られは不完全燃焼。娼館で行われる凌辱接待は、対魔忍シリーズにしてはソフトな印象がある。だが、嫌々ながらの娼婦プレイや女体改造が好きなら、なかなか興奮できる内容だと思う。
グラフィックについては、一枚絵や立ち絵それ自体の出来は素晴らしい。しかし、それらを用いた一見大胆な演出の一部は、逆に評価を下げる要因になってしまっている。
1. 奴隷娼婦としての女体改造
今回の女体改造は、LiLiTHにしてはだいぶ本格的だ。
奴隷商人らに騙されたヒロインは、”奴隷娼婦の子宮”たる改造装置に拘束される。身動きできないヒロインに施される改造は、全身の性感を増幅する神経改造、および淫らな思考を促進する洗脳改造。改造は何週間も絶え間なく行われ、排泄さえも改造装置によって管理される。
これらの改造は、途切れ途切れではあるものの、1本のエロシーンとして成立する程度には尺をとって描かれている。しかも、シリーズの他作品と違って、ストーリーの途中で改造の効果が曖昧にならない。特殊粘液による神経改造は”奴隷娼婦の子宮”から解放されても定期的に施され、エロシーンの只中にも洗脳改造の効果がしっかりと反映されている。
2. 心は達郎のものなのに……感じてしまう
寝取られものとして、ヒロインの処女喪失シーンはなかなか見物であった。その後の展開も、中盤までは興奮させられた。
あれだけきつい女体改造を施された後でも、ヒロインは達郎のことをずっと想い続けている。その想いは、”ご主人様”に犯されている最中でも変わらないはずだった……が、洗脳改造の影響か、何度も犯されるうちに、達郎への想いさえも快楽の衝動に上書きされていく過程を楽しめた。
しかし、ヒロインが娼婦として快楽を貪っていることが、達郎にバレた後の強引な展開は宜しくない。それまでずっと蚊帳の外だった彼にバレたからといって、そのまますぐに堕ちる展開は急ぎすぎている。エンディング前にあと数シーン挟んで、心の折れたヒロインや達郎の絶望をちゃんと描いてほしかった。
3. 超展開、そして丸投げ
本作のストーリー構成は、ひどく杜撰である。
中盤までは良くても、終盤は超展開。黒幕がドヤ顔で「実は~だったのだ!」と種明かしするが、そこに説得力を持たせるだけの伏線は乏しい。しかも、達郎の特技に風遁以外を選んだ場合、一番有力だった伏線が潰れてしまう。
エンディングは4種類あるが、そこに至るまでの過程は8割方同じ。エロシーンは、どのエンディングへ向かっても、取得できるのは共通のものばかり(殆どゆきかぜ)。選んだ選択肢による差異は、途中のテキストとエンディングが少し違う程度にすぎない。
(公式的には)凛子エンディングはあるが、本編で凛子が凌辱されるシーンはほとんど描かれない。凛子のエロシーンだけ、何故かエンディング後に閲覧できる「調教日記」に隔離されている。
おそらく、どこぞの寝取られ作品にでも触発されてこうしたのだろう。しかし、本編がおざなりにされた状態では、「実はこんなふうに調教されていた!」なんて言われても、いまいちピンとこないのだ。
他3つを観た後に開放されるGOODエンディングの内容は、それはもう酷いものだった。明らかに続編を意識していて、因縁の関係を丸投げする暴挙に出ていた。
こんなものがGood? Goonyの間違いだろう。こんな投げやりなものを最後に観せられるくらいなら、はじめから無ければ良かった。
4. 演出が戦犯
葵渚さんの一枚絵自体は、たいへん素晴らしい出来であった。立ち絵さえもが、神がかってエロかった。ローションを塗られて光沢のある日焼肌、弄ばれ貫かれる未成熟な肉体、ずっぽりと男根をくわえ込んだ淫らな秘所……その全てに興奮させられた。
エロシーンレベルでは、特に口淫シーンが素晴らしい。口淫してはい終わり、ではなく、精液で汚れた男根を眼前に、口内射精されたものを咀嚼させられる場面は、精飲好きには堪らないものがあった。また、親子とセックスし汚れたペニスを、その二人にお掃除フェラさせるシーンも最高であった。
欲を言えば、口淫以外のシーンで、もう少し表情差分が欲しいところだ。特に達郎の前で犯されるという一番重要な場面では、もっと露骨に動揺した表情が欲しかった。
しかし、そのぶんを差し引いても、秀逸と評価できる絵であったことに疑いはない。
そう、一枚絵そのものに限っては。
さて突然だが、読者諸兄は、上の画像(製品版から引用)を見てどう思うだろうか? 男の大きな身体がヒロインの表情を隠し、モザイクのかかった睾丸が秘所を覆い隠している。このようなものを見せられて、果たして興奮するだろうか。
いやこれは、あえてヒロインを隠すことで淫靡さを増す「演出」なんだ、と解釈したくなるかもしれない。だが、仮にこれが「演出」なのだとしたら、その淫靡さを増すための仕掛けは、テキストや音声に施されていなければならない。視界が遮られている以上、視覚以外の感覚によって興奮を誘う必要があるからだ。
しかし残念ながら、そのような仕掛けが本作に施されているわけもないのだ。テキストは視えない何かを伝える表現をとっていないし、BGV等で聴覚が刺激されることもない。ただ男の汚らしい身体がヒロインを覆い隠しているだけで、そこに性的嗜好を感得させる何かはない。
さらに悪いことに、この「覆い隠す演出」が施されているのは、上の画像だけではない。むしろ、これは普通なほうだ。
最悪は、もっと酷い。男の身体だけでなく、馬鹿でかい断面図までもがヒロインを覆い隠す。あるいは、イラマチオされている口元から胃のあたりまでを描いた気持ち悪い断面図が、事もあろうかヒロインの身体に重ねられ、その結果、口淫で最も重要な表情が視えなくなっているものもある。
また、「覆い隠す演出」以外にも、駄目出しすべき演出がある。それは、上画像のような状況から、男の腰がカクカクとピストンする擬似動画的な演出だ。
これに関しては、ピストン中にヒロインの喘ぎ声が同期されていれば、あるいは良い演出だったのかもしれない。しかし実際には、ピストン中は無言であり、動作が止まってから遅れて喘ぎ声が聞こえてくる。
すごくシュールな演出で、明らかに失敗している。しかもこんな演出が、決して1回ではなく、何度も多用されていることには呆れてしまう。
これらの演出のせいで、一枚絵や音声の評価は下げざるを得なくなった。余計なことをしなければ、最高に良いグラフィックであったものを……まったく、なんてことをしてくれたんだ! これには、絵買いの私は、本当にムカついて仕方なかった。
評価とコメント
演出方法を次回も引き継がずに、ちゃんと改善してほしい。また今回、メッセージウィンドウの透明度がいつもより高くなっているが、わざわざ色付メニューを右側に集めているあたり、ウィンドウ透過の重要性について全く理解が足りていないようだ。
- 総合評価 115/200点
- シナリオ 15/60点
- グラフィック 65/80点
- 音声 25/40点
- システム 10/20点
作品情報
タイトル | 対魔忍ユキカゼ |
ブランド | Lilith |
発売日 | 2011年09月16日 |
ダウンロード販売 | DLsite FANZA |
パッケージ通販 | Amazon 駿河屋 |