概要と評価 175/200(優)
あらすじ
教師である滋比古は、教え子のキリエに恋をした。滋比古はキリエの正体を知ってもなお、彼女のことを忘れられず、彼女の愛を求めていく。
感想の要旨
グラフィックと音楽・声の完成度が非常に高い。シナリオは洗練されていない部分があるものの、萌えもエロもツボを押さえている。
エロシーンの属性
搾精的なプレイが多い。どちらかといえば男性受け~被虐だが、逆転する場合も多い。抽送やイラマチオのシーンは、アニメーションで表現されることが多い。
目次
1. かつてない驚異のクオリティ
2. 雰囲気の効果
3. 萌えとエロの両立
4. コメント
1. かつてない驚異のクオリティ
二千~三千円という価格帯の作品水準を知っているなら、本作のグラフィックと音楽からなる迫力に、感嘆せずにはいられないだろう。未だかつて、ここまでクオリティの高いロープライス作品があっただろうか。この価格帯には、ある程度の妥協が暗黙の了解としてあるはずなのだ。しかし本作は、フルプライスでしかあり得ないような出来栄えをみせている。
八宝備仁さんが描くヒロインは、骨格のうえに肉をまとっている。彼女が腕を上げれば、胸筋と広背筋がかたどる腋窩が見えて、股を開けば、恥骨の辺りの肉がくぼみ、曲げた脚の脛には美しい、やや弓張りになった稜が浮かび上がっている。このヒロインは、設定だけでなく実体として華奢な肉体を持っているかのようだ。そのからだに確かな質感のあるゴシック衣装をまとい、これまた細部まで美麗に描かれた城内外の空間で、彼女は生き生きと過ごしている。
もちろん、ヒロインが犯される際にも、その生々しい存在感は発揮されるのだ。そこで犯されているのは、平面マネキンではなく「少女」だと実感できることが、エロゲーでは見飽きたようなシチュエーションさえも興奮できるものに変えている。
秀逸なBGMは、ヒロインの濡れ場をうるさくなりすぎない程度に盛り上げる。また、エロシーン以外の重要な場面をも盛り上げ、グラフィックと連携し、視覚と聴覚の両面からプレイヤーの没入感を加速させていく。
本作の高評価は、グラフィックと音楽によるところが最も大きい。もちろん、青空ラムネさんという実力派声優の演技も大きく貢献している。シナリオは不良ではないものの、後述するように強引な部分が目立つ。グラフィックと音楽・声優は、その強引さを十分にフォローしている。
2. 雰囲気の効果
ストーリーの本筋は、教師(滋比古)と吸血鬼の少女(キリエ)とのラブストーリーだ。
担当学級の美少女キリエに一目惚れした滋比古は、何とか彼女の心を得ようと、しつこく彼女につきまとう。たとえ彼女が嫌がっていたとしてもお構いなしだ。キリエに対する滋比古の要求は、どんどん厚かましくなっていく。生徒ではなく俺の血を飲めというだけならまだ理解できるが、関係が熟さないうちに、眷族に加えろだの、肉体関係を持てだの、そんな一人よがりの欲望を押しつける彼は、完全にストーカーだ。
こんな男、キリエに断固として拒絶されて当然のはずだ。だが、なぜかキリエは、本来なら許されない数々の蛮行を結局は許してしまう。このことについて、本筋序盤の展開には説得力が欠けている。長い年月を退屈に生きて変化を求めていたから、という程度では理由として弱い。レイプ魔を許して受け入れてやるには、それ相応の強固な理由づけが必要だろう。そう考える故、本筋序盤のストーリーに対する私の印象は良くなかったのだ。
しかし、秀逸なグラフィックと音楽は、その悪印象を覆す。美しい背景と音楽の圧力に酔い、蠱惑的な少女の姿に見惚れてしまえば、もともとあまり期待していなかったストーリーの多少の欠陥など、どうでもよくなる。「こういうのを”雰囲気ゲー”というのか」と私は気づき、そして納得した。幻想的な霧の城に引きこもる間、ついには論理性がイメージに屈したのだ。
3. 萌えとエロの両立
ストーリーの歪さ、強引さを棚上げしてしまえば、このシナリオも悪くはない。シナリオの重点は、ツンデレお嬢様萌えと、男性被虐・逆転に置かれている。キリエに好感を持ち、SとM両方いけるひとなら、大いに楽しめるだろう。
キリエは、長く生きた吸血鬼であるゆえに、とても気位が高い。キスは絶対に許さないし、常に自分が主導権を握っていないと気が済まない。滋比古のことはあくまで食料として傍に置いてやっているのだ、とキリエは言う。彼女も後に気づいたことだが、吸血鬼は血のほかに精液も糧とできるようなのだ。
そんなわけで、エロシーンには搾精的なものが多い。いったん射精して白く汚れたペニスからも、さらに搾り取っていく。キリエは全身で、それを栄養として摂取できる。口や膣での直接摂取はもちろん、素肌にぶっかけられても気持ちいいのだ。ただ摂取するだけでは飽き足らず、好物の赤ワインを白濁ペニスにぶっかけて食べたりもするくらいだから、彼女も言うように、よほど滋比古の”おちんちん”が気に入ったとみえる。
餌付けされた動物は、餌付けした人間に依存していくものだ。キリエにとっては食事でもある性交を重ねる度、彼らの関係は深まっていく。そうして滋比古に依存したキリエは、快楽に酔いすぎて、プレイ途中での立場の逆転を許してしまうようにもなる。
あれだけ人を拒んでいた彼女が、ストーカー気質の男に、徐々に心を開いていく。しかし、彼女は相変わらず気位が高いために、なかなか素直になれない。そんなジレンマの隙間から滲み出るような、ツンデレな言葉と仕草が、お嬢様系ヒロインをこよなく愛する者の心に、「萌え」の二字を刻み込むのだ。
ツンデレの”ツン”と”デレ”のバランスが少しずつ右へ傾いていくのが、分かる。その変化はエロシーンと密接に関係しており、実用性と萌えが両立している。そうした点に限ってみれば、本作のシナリオはよく出来ている。
4. コメント
本作の評判は聞き及んでいたが、期待以上に良い作品だった。シナリオについては多少厳しいことも書いたが、そう書いたのはグラフィックと音楽の出来が良すぎたせいでもある。作品の評価が他作品との相対的な関係で定まるように、一つの作品の内部でも、「これが良ければもっと良いのに!」という改良への願望は、やはり内部相対的な観点から生まれてくる。これからプレイするひとは、細かいことは気にかけないスタンスで、純粋に萌えとエロを楽しんでほしい。この記事を執筆した時点で2作目もリリースされていたので、これも後で購入するつもりだ。
- 総合評価 175/200点
- シナリオ 40/60点
- グラフィック 80/80点
- 音声 40/40点
- システム 15/20点
作品情報
タイトル | 美少女万華鏡 呪われし伝説の少女 |
ブランド | ωstar |
発売日 | 2011年12月29日 |
ダウンロード販売 | DLsite DMM |
パッケージ通販 | Amazon 駿河屋 |