ダンジョンクルセイダーズ2 ~永劫の楽土~ 感想

総評 140/200(良)

1人称視点のダンジョン探索型RPG。前作がたいへん不評だったので、あまり期待しないでプレイしてみたが、実際の出来は期待よりずっと上だった。シナリオはやや薄いが悪くはないし、エロは濃く、シビアな戦闘には緊張感がある。

もちろん評価できる点とともに欠点も沢山あるので、誰に対してもオススメできる作品というわけではない。しかし、昔の理不尽でマゾいゲームが懐かしくて、久しぶりに逝ってみようかと思える方には、お正月をつぶすのに向いていると思う。

シナリオ 35/60点

物語は、どこか、昔ながらのファンタジーゲームの王道を匂わせる内容。新鮮なイベントは特にないが、それだけに安定感のある仕上がりになっている。

人間関係について

優男然とした主人公 アリオンは、いいオンナを見かけるとナンパせずにはいられない性格をしている。彼は最終的には、パーティにいるヒロインたち全員+αを抱くことになる。

ヒロインたちは殆どの場合、アリオンのそんな性格を承知の上で、彼に抱かれている。一部のヒロインを除けば、アリオンが他の誰と寝ようが、ひどく嫉妬する様子はない(※ コメディ要素程度には有)。つまり、本作品における主人公-ヒロインの関係は、”パーティの仲間”兼”セックスフレンド”のような関係となっている。

こういう特殊な人間関係であるために、人によっては、主人公やヒロインに最後まで好感を持てないかもしれない。特に最近の純愛至上の美少女ゲームに慣れている方々は、自分の好みに注意したほうがいい。

エロについて

一回のエロシーンの尺はとても長く、それでいて冗長でない。テキストには贅肉が少なく、なかなか洗練されていて読みやすい。各シーンの台詞や展開には、ヒロインごとの個性がきちんと反映されている。読み進めていて、ニヤニヤが止まらなかった。

エッチの内容は万人向け……かと思いきや、フタナリやショタなどのニッチも詰め込まれている(※ ただし本数でいうと、圧倒的に普通なのが多い)。ハーレムも有。

構成について

物語は一本道で、ルートの分岐はない。各ヒロイン固有のエピソードの量については差があって、エンデ・グリシーヌ・カバネ以外のヒロインのエピソードは極少だ。最終的に主人公と恋人っぽい関係になるのは???だが、二人きりでラブラブに! という展開はあまり期待しないほうがいい。

物語の構成は、本筋は4章立て。1~2章まではほとんど話が進まないが、3章以降から山場になってくる。

4章終了までのプレイ時間は、人によってだいぶ変わってくると思うが、私の場合は40時間程度だった。かなり時間を費やしているが、これはシナリオのボリュームが豊富だからではなくて、ダンジョン探索に時間がかかるからだ。ADVパートだけでいうと、一日で終わる程度のボリュームだと思う。

しかし、ダンジョン探索RPGである本作品としては、このくらいのボリュームで丁度良いかもしれない。一般のRPGとダンジョン探索型のRPGは、似て非なるものだ。ダンジョン探索RPGのシナリオは伝統的にシンプルなものばかりだから、その手のゲームが好きな私としては、特に不満を感じなかった。

不満点について

不満なのは、①”永劫の楽土”を目指してダンジョン探索をしているはずなのに、”永劫の楽土”について掘り下げが足らないこと。また、②物語が進むにつれて、当初の目的に対する意識が薄れてくること。後述する③塔を昇っている気がしないことも相俟って、何のための探索だったのかと醒めた気持ちになったりもする。

おまけについて

本作品には、本筋のラスボスを倒した後にも、おまけダンジョンなどが存在する。本筋だけでは、CG・回想ともに100%は埋まらないので、注意してほしい。

グラフィック 50/60点

基本CG枚数は、120枚。ダンジョンやモンスターのデザインもあるのに、基本CG枚数は相場より少ないどころか、むしろずっと多いというのが素晴らしい。この点については、流石に有名ブランドは違う。

エロシーンは、45本。一本のエロシーンにつき、基本CGが2~3枚ほど使用される。CG差分も大体10枚前後あるので、単調ではないエロを楽しめる。

原画は、M&Mさん。目の描き方に癖があるが、慣れれば問題ない。エロCGは、数枚ほど少し崩れた絵もあるが、全体的にみればそのクオリティは高い。

モンスターのデザインについて

モンスターのデザインは結構凝っていて、センスが良い。流石に動いたりはしないけれども、如何にも凶悪そうな迫力がある。それは終盤に近づけば近づくほど顕著で、苦手なモンスターの絵は私のトラウマになっている……(※ トウリョウとかゴーレムとかモルスとか、もうね……orz)。

色違いの使い回しのモンスターはもちろんいるが、各ダンジョンごとに新規の絵が出てくるので、マンネリ感はそれ程ない。むしろ、よくこれだけ多くのモンスターを用意できたなぁ、と感心する。

スキルエフェクトについて

スキルエフェクトについては、本作品のグラフィックで最も残念な出来だった。

とても地味なエフェクトばかりで、RPGツクールのデフォルトのエフェクトよりも見栄えが悪い。しかも、下位スキルのエフェクトは上位スキルにおいても使いまわされる。RPGで新スキルのエフェクトを見るのは最もワクワクするところなので、こういうところで手を抜かれると、気持ちが萎えてしまう。

ダンジョンのデザインについて

ダンジョンのデザインについては、可もなく不可もなく。各ダンジョンごとに色や模様を替えて、単調な感じを殺そうしている努力は窺える。それでも単調だといわれると、「それはまあ”ダンジョン探索RPG”だから仕方ない」としか言いようが無い。

修正について

モザイク修正はとても薄いし、不要なところには被せていない。モノの陰影もしっかり把握できる。上のサンプル画像では、修正が濃くかかっているが、これは飽くまで”ネット広報用だから”気にしないでほしい。製品内のCGは、もっと全然薄い。

ちなみに、本作品は萌えゲーと違って、大人キャラにはちゃんと陰毛が生えている。心が汚いと幼く見える18歳以上の少女については、いちおう天然のパイパンだ。

音楽・声優 35/40点

音楽は、全34曲。うち1曲は、ボーカル曲(Crusader dream)。なかなか上質な曲が多く、戦闘やダンジョン探索の雰囲気に巧く溶け込んでいる。

声優さんはベテランばかりで、演技についてはもちろん申し分ない。面子は、過去のアトリエかぐや作品に参加した経歴のある方ばかりだ。

エンデ 野神奈々 カバネ 春日アン
グリシーヌ 金田まひる ミリア 風華
レジーナ 水瀬沙季 ロゼ このかなみ
シルヴィア 深井晴花 ナーダ 井村屋ほのか

システム 20/40点

ゲームシステムの概要については、Gyuttoの『ダンジョンクルセイダーズ2 ~永劫の楽土~』のページの、ゲームシステムの項目を参照。以下では、特に留意すべき点について説明する。

難易度について

ゲーム難易度は、ダンジョン探索RPGとしては普通程度。だが、一般のRPGを基準にするなら、理不尽なくらいに難度が高い。

1章まではすごく簡単だが、2章から少しずつ、敵の鬼畜な強さが滲み出てくる。3章からは、雑魚敵が全体攻撃や全体状態異常攻撃、即死攻撃などを行うようになってくる。4章では、パーティのメンバーが雑魚敵に瞬殺されたり、気がついたら全滅していた、なんてことは当たり前のように起こる。

ダンジョンの各層にいるボスの強さについては、ピンからキリまで。単なる肉塊に過ぎないような弱いボスがいる一方で、勝利することに絶望するほど強いボスもいる。しかし、どのボスについても、きちんと対策を練ってから当たれば”たぶん”勝てる、というくらいの絶妙な難度設定になっている。

理不尽さに挫けると、そのプレイヤーにとって、本作品はクソゲーとしか言いようがない代物になるだろう。だが、その理不尽の闇のなかに一筋の光明を見出し、そこをついて敵を撃破したときの快感は、とてもたまらないものだ。

ダンジョンの構造について

すべてのダンジョンは、1つの塔内にあるという設定になっている。が、実際には、副題(Ex.魂無き刃たちの夢獄)付きの15個+αのダンジョンが、さらに数層>数階に分けられているので、同じ塔内を昇っているという感覚は薄い。

ダンジョンの構造は最初のうちはとても単純だが、高層へ昇るにつれて、だんだんと複雑化してくる。4章では、各層の階も2~5階まで増え、落とし穴やワープゾーンも非常に多くなっている。そのため、4章のダンジョンの攻略にかかる時間は、1章のそれにかかる時間よりもずっと長い。

スキルについて

スキルは、自分でポイントを振り分けて取得する方式になっている。取得するスキルはある程度自由に選べるが、上位のスキルは、スキルツリーの条件を満たさないと取得できない。

スキルポイントは、Lv1の時点で3ポイント用意されている。以降は、レベルが1上がるごとに、1ポイントずつ取得される。一度振ったポイントはリセットできないので、慎重に振ってほしい。スキル取得で絶対に失敗したくない場合は、Wikiを参考にすると良い。

ちなみに、4章終了時の私のパーティの平均レベルは58だった。スキルポイントは60まで取得したことになるから、このくらいを目安にスキル振りすると良いかもしれない。

装備について

本作品に、武器や防具の装備という概念はない。代わりに、魔氷石と呼ばれるアイテムと、アクセサリを装備する。

魔氷石は、1キャラにつき3個まで装備できる。そしてその装備した魔氷石の組み合わせによって、追加効果が加わる。アクセサリは1個しか装備できないが、レアアクセサリの効果はかなり高い設定になっている。

本作品では、どの魔氷石やアクセサリを装備して戦闘に臨むかが、勝利への鍵となる。序盤は力押しで勝てても、終盤では魔氷石やアクセサリで対策するか、相当にレベルを上げないかぎり勝てないようになっているからだ。

武器や防具と比べて地味なイメージがあるが、慣れればこれはこれで、なかなか楽しいシステムだ。Wikiに頼らずに、レアな魔氷石の組み合わせを発見できたときは、かなり嬉しかった。

ゲームパッドについて

ゲームパッドが無くてもプレイ可能だが、有ったほうが操作しやすいと思う。2,000円前後で買えるし、今後も使う機会があるかもしれないので、一台あると便利だ。

ゲームパットの各ボタンへのキー割当は、ゲーム起動時に設定可能である。

操作性・UIについて

ダンジョン移動や戦闘における基本的な操作は簡単だが、プレイヤーの便宜への配慮は足りていない。

まず①戦闘エフェクトのスキップができない、というのが痛い。しかも②スキルエフェクトが、全体スキルを使ったときも、各キャラにいちいち個別でかかるので、テンポが悪い。また、③戦闘で詰んだと思っても、その戦闘を途中放棄する手段が『ゲーム終了』以外にないのもダメ。死んで覚えるゲームで、これはいただけない。

その他、④ステータスやインベントリなどの画面を表示する際の手順が煩雑なことや、⑤アイテムを連続使用する際に、1個使うたびに画面が切り替わること等については、要改善。次回作があるなら、この操作性・UIの悪さを何とかしてほしい。

バグについて

本作品には、バグが多い。それらのバグはゲームがまったく進行できなくなるほど酷くはないが、ゲームバランスがおかしくなったり、フリーズしたりする程度には深刻なバグである。

執筆現在(12/30)では修正パッチ1.03があるので、これはプレイ前に必ず当てておこう。現在確認されているバグについては、Wikiのこのページを参考にしてほしい。

作品情報

タイトル ダンジョンクルセイダーズ2 ~永劫の楽土~
ブランド アトリエかぐや
発売日 2008年12月19日
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