概要と評価 100/200(可)
このレビューは、Ver.1.01の内容に基づいています。
本作のあらすじ
ブラックエースとして知られたA級冒険者であるカイトスは、取り憑かれたバインドの呪いによって、学生時代の肉体に若返った。なぜか指名手配されたカイトスは、名をエイジと偽り、冒険者育成学校であるアガレスタ学園の生徒となった。エイジは学生生活を満喫しながら、リリアムや他の仲間達とともに、バインド事件を解決して元の姿に戻るために奮闘する。
感想の要旨
質の低いシナリオと、出来の悪い戦闘システムには辟易した。無難なライトユーザー向け路線でいくなら、もっと快適にプレイできるように配慮してほしい。
エロシーンの属性
萌えゲーのような和姦。アブノーマルといえば、野外プレイくらい。
目次
- 破綻したテーマ性
- キャラゲーとしても微妙
- 面倒な回収作業
- レベルを上げて物理で殴れ
- コメント
1. 破綻したテーマ性
本作のシナリオは2つのテーマを抱えており、そのために破綻している。
冒険ではなく冒険者育成に重きを置いているなら、ほとんど冒険せずに、ひたすら訓練に明け暮れる内容でも構わない。バインドという、ジョジョでいうスタンド、アトラスでいうペルソナや悪魔を集めて、封印(封神)することが目的なら、その目的に向かって奮闘すればいい。しかし、アリスソフトがこの2つを無理やり悪魔合体させたとき、何とも残念な作品が誕生してしまったようだ。
冒険を謳っておきながら近場でしか冒険しない作品は、それだけでも「冒険」という言葉の持つスケールの大きさに見劣りするように感じる。そこへ、別世界から来たバインドの封神という大きな目的が被せられるのだ。「冒険」に「封神」と言葉だけは壮大だが、実際にやっていることは、学生が楽しい学園生活の合間に、近場で起きたバインド事件を解決するだけのこと。大事件が起きても、なぜか学園周辺の出来事で完結している。この世界の狭苦しさは、コメディの明るい雰囲気だけではとても誤魔化しきれない。
また、冒険者育成とバインドの封神は、”直接的には”何の関連性も持たない。モラトリアムな学園生活と、世界の命運がかかったバインド事件は、ロウとカオスのように相容れない関係にある。しかも、本作には両者をうまく調和させるような配慮が感じらない。ストーリーを真面目に追えば追うほど、道理に合わないことばかりが目につき、萎えた気持ちにさせられた。
2. キャラゲーとしても微妙
ストーリーは決して良くはない出来だったが、ヒロインたちのキャラクター性はどうか。キャラクター性は、どのヒロインもテンプレート的で、真新しさがまったく感じられない。ギャップらしいギャップはあまりなく、基本的には見た目どおりの中身だ。キャラクターイベントは、過去に他所の作品で見たような展開ばかりが目につく。型にはまったヒロインをお定まりの文脈で楽しむための、二次創作的なキャラクター作りだといえる。
日常シーンには、オタク関係のネタが散りばめられている。この手のネタは、もう少し控えめにして欲しかった。というのは、別にオタクネタが嫌いだからではない。そういうネタがただでさえ窮屈な本作の世界を、さらに狭苦しく感じさせるからだ。せいぜい東京都くらいの世界だと思っていたものが、急に秋葉原になったような感じ、といえば分かってもらえるだろうか。
攻略対象のヒロインは、リリアム、エミリィ、マリ、蒼生、シャーリーの5人のみ。ミーナ、川田さん、園長にはエロシーンが用意されているが、水無瀬、ビビットには一枚絵すらもない。
尚、本作は、処女独占の原理主義者にはオススメできない。一部のサブヒロインは主人公以外と相思相愛になるし、マリとリッキーは(一応の予防線はあるにしても)お似合いのカップルに見えるからだ。
3. 面倒な回収作業
全員のキャラクターイベントを回収する作業には、相当時間がかかる。というのは、
- 必須イベントが邪魔で、フリーでまとまった日数を取りにくい。
- キャラクターイベントの日数や曜日制限がきつい。
- 好感度レベルを最大にするための必要好感度が多すぎる。
- 周回プレイで、キャラクターイベントの進行がリセットされる。
これらの問題があるせいで、周回プレイを重ねなければ、全員の好感度レベルを最大にできないからだ。しかも、ほとんどのHイベントは、好感度の高レベル帯に密集している。
また、本作はいわゆる一本道シナリオである。キャラクターイベントをこなして特定のヒロインと恋仲になっても、その労力への報いはエンディングがちょっと変化するだけだ。このふざけた構成が、プレイヤーのやる気をごっそりと削いでしまう。
4. レベルを上げて物理で殴れ
本作は、SRPGとしてはかなり酷い出来だ。通常のSRPGなら、FE等の先達のシステムを参考にアレンジを加えるが、本作におけるアレンジは、ただの引き算である。地形効果や隣接効果などは一切なく、レベルを上げて殴るだけのゲームだ。
本作の最終的な戦術を要約すると、2行で終わる。
- テンションを優先して、パーティにバフをかける。
- 敵をスキルの有効範囲に捉え、攻撃する。時々回復も。
ただ物理や魔法で殴りあうだけのゲームには、これ以上考える必要がないのだ。なにせ、この戦術だけでほぼ全てのマップを制覇し、ほぼ全てのボスを倒せるのだから。
バインドとかいう憑き物は、所詮は装備品みたいなものだ。バインドをつけたところで、戦闘演出の変化は乏しい。キャラクターのモーションやスキルエフェクトですら貧しいのだから、バインドの演出に割けるリソースはないのだろう。数は初回特典を加えても51体しかないし、なぜか魔法系に偏っているので、リリアム以外と相性の良い物理系バインドは、選択の余地がほとんどない。
ほとんどのアイテムは店で買えるため、トレジャーハンティングをやる気にはなれない。マップ上の敵の配置が適当すぎて、無意味に走らされることがしばしば。マップの奥まったところにある宝箱を開けると、ゴミが出てくる。そして、それは店でも売っているのだ。
5. コメント
本作の唯一洗練された部分は、テキストスキップや戦闘演出の高速化だ。シーン単位でスキップできて、未読・既読も判定してくれるので、読む価値のないテキストを二度読みする苦痛から開放された。また、戦闘演出は程よく高速化されるから、頑張れば1回の戦闘を数分で終わらせることも可能だった。もしこれらの機能がなかったなら、私は間違いなく本作のコンプリート作業を放棄していたと思う。
私にとって幸いだったのは、シャーリーを好きになれたことだ。クールなツンデレで、お嬢様で、微乳というのがツボだった。彼女の作画は乱れがちではあったものの、乳房の部分に関しては素晴らしい出来栄えであった。シャーリーのイベントを最後の楽しみに取っておくことで、面倒な周回作業も乗り切ることができた。彼女と、彼女の乳のおかげでコンプリートできたのだ。
- 総合評価 100/200点
- シナリオ 10/40点
- グラフィック 45/60点
- 音声 30/40点
- システム 15/60点
作品情報
タイトル | パステルチャイム3 |
ブランド | アリスソフト |
発売日 | 2013年2月15日 |
ダウンロード販売 | DLsite FANZA |
パッケージ通販 | Amazon 駿河屋 |