ストーリー概要
矢旗澤子爵家当主である主人公は、織田桐伯爵家の放蕩当主 治道の遺言により、鉄塔の聳え立つ不気味な屋敷を相続した。まるで廃墟のような屋敷の地下室には、まるで仏蘭西人形のように美しく、可憐な純白少女が眠っていた。その少女に惹かれた主人公が、少女の耳元で「光在れ」と囁いたとき、彼は少女の”ご主人様”となった。
“ご主人様”は、純白少女のために、毎日彼女にマウス・トゥー・マウスで”神酒”を飲ませなければならない。そうして少女の口唇を貪り、柔和な白肌に手を馴染ませた主人公は、いつからか少女に対し、肉の欲望を抱くようになる。
己の社会的立場と、少女への淫らな欲望と――主人公は葛藤しながら、しかし確実に、純白少女の、肉欲の虜になっていく……。
総評 105/200(可)
大正時代を舞台とした、一人の少女を巡る愛憎劇。丸谷+TONYという人気クリエイター2人による作品ということと、作品のテーマが好みなこともあって、大いに期待を寄せていた。が、実際にプレイしてみれば、ただのクソゲーだった。
大金のかかった駄作というのは、時に低予算の地雷作品よりも罪深いことをする。……何がそんなに駄目かって? それはゲームデザインが根本的におかしいから、全体的に駄目なのだ。まったく、奇を衒わなければ良作にもなれたものを……。非常に惜しい作品だ。
シナリオ 15/80点
序
『仏蘭西少女』は、大正時代を舞台とし、純白少女(Une fille blanche)に魅了された矢旗澤子爵の破滅を描いた作品だ。ヒロインは、純白少女 オルタンシア、義理の妹 香純、友人の姉で上海マフィアのボス 舞子の三人がいる。
物語の前半は共通ルートであり、ここでのパラメータの変化によって、後半の各ルートへ分岐する。後半は6つのルートに分岐するが、これらのルートは相互にリンクしている。エンディングによっては、例えば少女ルートから多情ルートに入って、特定の行動をすることを要求しているものもある。
『仏蘭西少女』の物語は、かなりゆっくりと進展していく。良く言えば、登場人物の心理や状況の変化がじっくりと描かれている一方、悪く言えば話の展開が遅すぎるともいえる。エロシーンも、物語の半分を占める共通ルートが終わるまで、ほとんど出てこない。そのため、手っ取り早く抜きたい方や、テンポのはやい物語を楽しみたい方にとって、本作はまず向いていない。
また、48個のエンディングのうち過半数は、バッドエンドか鬱エンドである。それゆえ、プレイヤーはどのように攻略したとしても、バッドエンド・鬱エンドの連続を観ることになるだろう。また後述するように、本作の攻略難度は非常識に高いので、自力攻略にこだわると、同じエンディングを何度も観たり、共通ルートを何度も往復し、60~80時間ほどを浪費する破目になるだろうことは覚悟しておいたほうがいい。
私は、『仏蘭西少女』のシナリオはゴミだ、と思っている。その理由は、主に2つある。冗長なテキストが読んでいてだるいのと、ほとんど誰にもコンプリートできないような複雑なゲームデザインが致命的なのだ。以下では、これらの理由について、さらに詳しく言及していく。
ゲームデザインについて
本作の攻略難度は異常である。そのため、ほとんどの人は、攻略情報無しには自力攻略できないと思われる。常人が攻略できないADVは、もはやゲームとは言い難いから、これは大幅に減点する(※ シナリオの項目で減点しているのは、①主に物語展開に影響を及ぼす欠陥であるのと、②これをシステムとして減点すると、不当に点数が伸びてしまうからです)。
なぜ自力攻略が難しいかというと、以下のゲームデザイン上の欠陥が根拠となる。
- エンディングの数が多すぎる。
- 特定のエンディングを観る条件が厳しすぎる。
- すべてのエンディングを発生させるための前提条件が長大な共通ルートに依存している。
- なぜそれらの選択肢を選んでいけばそのエンディングになるのか、必ずしも論理的ではない。
(1)については、エンディング数の水増しが問題である。例えば、「失格」というバッドエンディングには「失格1」「失格2」「失格3」と三種類があるが、それらは一部のテキストを入れ替えたものに過ぎない。にもかかわらず、エンディングの発生条件は近しくなく、未だ見ぬそれらのために多大な労力を必要とする。また、このような重複エンドは、バッドエンドだけでなく、トゥルーエンドにさえある。
(2)については、特定のエンディングを観るために、各パラメータを必要値まで増加させ、隠し選択肢を出現されることが困難である。本作のパラメータにはヒロイン3名の好感度(関心度)のほか、残酷度と欲情度という、およそプレイヤー側からはそれがあること自体を認識しがたいパラメータが2個も存在する。
一人の登場人物に絞って好感度をあげ、それに関係する隠し選択肢を出現させる”だけ”なら、それほど難しくはない。しかし重要なエンディングを観るためには、ほとんどの場合、複数のパラメータを同時に向上させなければならない。そして複数同時に向上させることを要求しているわりには、それを可能とする選択肢の選び方がガチガチに制限されてしまっているのが問題である。
(3)については、各エンディングを発生させるために必要な前提条件のすべてが、合計60前後もの選択肢のある長大な共通ルートに依存しているのが問題である。このせいで、すべてのエンディングを観るためには、プレイヤーはほとんど観たはずの共通ルートを何度も繰り返し観る破目になる。攻略やヒントが無い状態でやるなら、数十回以上のリピートは覚悟しなければならない。
(4)については、そのままの意味である。もっとも、このシナリオの全体像を理解したうえで、後から振りかえってみれば、その選択肢を選ぶことでその展開になることについて、納得できる部分もないではない。しかし後から納得できたとしても、プレイヤーは現在の視点から攻略を進めていくので、そんなことが出来てもあまり意味がない。
これを喩えていうなら、完成図の分からない角無しジグソーパズルに挑戦するようなものだ。手がかりがほとんど無いのに、多数のピースのジョイントを組み合わせるという途方も無い作業だ。こんなものを、常人がやってクリアできるとでも思っているのだろうか? 本当に馬鹿げている。
テキストについて
『仏蘭西少女』のテキストを読んでいて連想するのは、初心者の書いた小説である。それまでたくさんの文学作品を嗜んできた青年が、いざ自分でも後世に残る名作を書いてみよう、と意気込んだ結果の産物に等しい。他人に意味内容を伝えることを目的とした実直な記述よりも、”文学的”示唆に富んでいると錯覚された詩的な表現への妄執ばかりが読み取れる駄文である。
本作のテキストは、何を描写させても回りくどく、読んでいて苦痛に感じられる。時代に合わせようとして、現代において常用でない漢字を多用して雰囲気作りをしているわりには、登場人物の思考が妙に現代的なのも滑稽である。
エロテキストについては、地の文による描写が不必要に多い。ほとんどのプレイヤーが、本作のエロにどんな期待を持って買ったのか、理解していないとしか思えない。せっかく実力派の人気原画家が100枚を超えるエロ絵を描き、ベテラン声優が熱演しているというのに……それなのに、どう贔屓目にみても底辺官能小説以下の腐れ駄文に自己主張されてしまっては、昂る気持ちが萎えてしまう。
最後に
さて、これまで長々と酷評してきたが、もちろんこの駄作とて美点がないわけではない。どうでもいいような過半数のエンディングを除けば、そこそこ面白く読めるものもある。それらについては、そのへんのワゴンに放られている駄作とは一線を臥す出来だと思うし、それら単体に対しては特に酷評する理由はない。そういうのは評価しているから、これだけ酷評しても0点ではなく、15点としているのだ。
しかし残念なことに、一部のエンディング――とりわけ私は「夏日」が好きだ――がどれだけ良かったとしても、全体的にゴミならゴミはゴミなのだ。生ゴミのいっぱい詰まったポリタンクのなかに、一握りの宝石が隠れていたとしても、その輝きは、太陽光に当てられた汚汁の反射くらいにしか見えない。
散々毒を吐いてきて最後に思うのは、総評 でも述べたが、「奇を衒わなければ、良作にもなり得たのに」ということ。背伸びしないで普通に書いて、エンディングの数を10個以内に収めていれば、それなりに読めただろうに……この作品のゲームデザイン兼原作兼シナリオライターに次回があるなら、次回では真っ当な作品を期待したい。
グラフィック 50/60点
CG鑑賞モードで閲覧できるCG枚数は、Ver1.20パッチ適用状態で282枚。そのうちキャラクター関連CGが161枚、演出及び背景関連CGが121枚ある。
シーン回想から閲覧可能なエロシーンの数は、114本。その内訳は、オルタンシア(37)、香純(47)、舞子(26)、オルタンシア&香純(2)、香純&舞子(1)、オルタンシア&香純&舞子(1)となっている(※ CG上にヒロインが1人だけしか映っていない場合は、そのヒロイン単独のものとみなしてカウントした)。ただし、本編中にはあるエロシーンで回想に登録されてないものもいくつかある。
CGの量については、よくこれだけの数を揃えられたものだ。キャラクター関連CGの枚数だけで評価しても、普通のフルプライス作品の倍近い量がある。これはもちろんプラス評価要素だ。
CG一枚一枚の質については、流石にTONY原画だけあって優れている。オルタンシアについては日常の可憐な仕草を描いたものが、香純については凌辱されて悲痛な表情を浮かべているものが、それぞれ美しい。ただ何故か、舞子関連のCGについては、他二人と比べて、美しいというよりも粗雑な印象が強い。
ほんとうに残念なのは、使い回しが多いこと。もっとも48個もあるエンディングに合わせて、使い回し無しで全部をカバーしろというのも無茶な話だとは思うけれども。
しかし、コンプリートするまでに何度も何度も同じCG、同じ演出を見せられては辟易するというのも事実だ。これは演出の問題というより、それ以前の企画の段階で失敗していると言わざるを得ない。
音楽・声優 35/40点
BGMは51曲。あまり自己主張が強くなく、物語の雰囲気にしっかり溶け込んでいる。
声優さんの演技については、オルタンシア以外についてはだいぶ良い(微妙な中国語演技は除く)。ただし、オルタンシアの舌足らずで甲高いロリ声は、私にとってはアウト。あまりにも作り物めいていて、嫌悪感すら覚える。まあ、オルタンシアの設定を鑑みるに、あれはあれで役に嵌っているのかもしれないが……。
オルタンシア | まきいづみ | 矢旗澤香純 | かわしまりの |
織田桐舞子 | 海原エレナ | 北畠蝶子 | 岡田まみ |
織田桐治道 | 皇帝 | 執事 | 空乃太陽 |
蔡子才 | 青菜炒眼 | 眞山皐之介 | 波多野和俊 |
中畑伊佐治 | 一条和矢 |
システム 5/20点
(1)本作はデフォルトではサウンドノベル形式だが、モード切替によってウィンドウモード(ADV形式)にも切り替えられる。また、外国語⇔日本語の表示切替機能があるのも嬉しい。あの妙な演技をずっと聞かされるのは耐えられないからだ。しかし、どうせ切替機能をつけるなら、コンフィグからも切り替えられるようにしてほしかった。
(2)セーブ機能については、改善される必要がある。通常のセーブがシステムに一纏めにされているため、システム>セーブの手順が面倒くさい。この手のゲームはセーブを頻繁に行う性質のものだから、ここは絶対に改善すべきだ。
セーブ枠については、まったく足りていない。セーブ枠は通常とオートで240個ずつあるが、自力攻略するならこれで足りるわけがない。何故ならば、このゲームはエンディングが48個もあって、オープニングからエンディングまで1周するのに、80個くらいの選択肢が出現するからだ。あの選択肢が出現するたびに記録するだけのアホなオートセーブの枠なんて要らないから、通常のセーブ枠を今の3倍は欲しいところだ。
(3)このゲームシステムにおいて最も罪深いのは、攻略のためのフローチャートやパラメータ表示機能が一切ないこと。それらがあれば、もっとマシな状態でプレイを進められたものを……。31日にはヒント機能がアップデートされたが、後から日和見実装するくらいなら最初から実装しろ、と言いたい。
エッチ内容について
すべてのヒロインにアナルセックス有り。オルタンシアと香純は処女だが、舞子は非処女。
香純については、近親相姦と凌辱中心。輪姦有り。解釈によっては、ネトラレやネトラセとみなせるプレイもある。
舞子については、自分から誘ってセックスする場合が多いが、主人公から仕掛ける場合もある。また、凌辱や輪姦もある。
その他蝶子というサブキャラのエロシーンもあるが、こちらは回想には登録されない。
以下では、各ヒロインにつき特に需要のありそうなプレイの存在のみ確認しておく。体位が違うだけのノーマルセックス、ネタバレが甚だしいもの、表現しがたいものについては、その他とだけ記す。
作品情報
タイトル | 仏蘭西少女 ~Une Fille Blance~ |
ブランド | PIL |
発売日 | 2009年7月10日 |
ダウンロード販売 | DLsite |
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