概要と評価 120/200(可)
本作のあらすじ
「犬神の陰陽騎士」の異名を持つ柳生トワコは、九子龍会を仕切る悪の陰陽師(夕闇)を成敗するため、彼女の行方を追っていた。敵の奸計にまんまと嵌められたトワコは、夕闇の組織が運営する娼館「快楽天楼」に囚われる。一方、トワコに仕える女執事(麗佳)もまた敵の罠に嵌められ、従順なメス豚となるよう調教を施されていた。
感想の要旨
自慰的な設定に固執したシナリオは、構成がひどくつたない。1本の作品として完結していない。烙印の設定は、『鋼殻のアイ』との類似性がある。『対魔忍アサギ3』のようなエロシーン演出は、成功と失敗で半々くらいかと思う。
エロシーンの属性
肉体の自由を奪われた上での調教。肉壁に丸呑みにされて媚薬漬けにされるシーンあり(媚薬改造)。胸には焼き印を押される。口淫(イラマチオあり)、羞恥プレイ、輪姦・乱交などがある。スカトロは衆人環視下での排泄や、ヒロインによる食糞がある。排泄物は、液状ではなく健康的な一本糞。
目次
- 設定で自慰する前に
- エンディングという名のプロローグ
- エロシーンについて
- コメント
1. 設定で自慰する前に
本作は、序盤から大量の設定用語を散りばめるも、そのほとんどに具体性がともなっていない。例えば、九子龍会とは何を目的とする組織で、どの程度の規模なのか。十二天将とはどんな称号で、どの程度すごいのか。そうした具体性に欠ける、張りぼてじみた用語ばかりを並べ立てている。
張りぼてのシナリオは、トワコや麗佳が敵の手に落ちてから終盤まで、単なるエロシーンの連続に終始する。それまで無意味な設定を見せびらかすオナニーに励んでいたのに、結局これか、と呆れてしまう。どうせこうなるなら、『監獄戦艦』のように最低限の設定で通すべきだったろうに。
トワコと麗佳は、それぞれ別の場所で、別の相手に調教される。敵の手に囚われた後は、終盤まで接点がない。2人の間には何やら主従を超えた絆があるようだが、序盤にはその絆を感じさせる具体的なエピソードが欠けていた。
出典:Black LiLiTH『陰陽騎士トワコ ~蛇神の淫魔調教~』
だから、なぜ、それほどまでに忠誠を誓っているのか。
また、トワコと敵方の因縁はストーリー展開上重要であるにもかかわらず、その因縁をもたらした過去のエピソードが貧弱だ。トワコと先輩の佐倉はどのような間柄だったのか、トワコの両親はトワコにとってどれ程の存在だったのか。そうしたことを伝えるエピソードが非常に貧しい。
制作者は、くだらない設定をだらだら語る余裕があるなら、その前に重要人物の関係を丁寧に描くべきだったのだ。魅力的な人物同士のドラマに貢献しない設定など、あるだけ邪魔だ。
2. エンディングという名のプロローグ
エンディングは次回に繋げる終わり方、というより、次回に根本的な問題を投げた終わり方になっている。本作だけでは何の解決にもなっていないので、本作は実はトワコシリーズ(未定)のプロローグ的な位置づけなのだろう。
まったく、おこがましいことだ。リリス作品の前例からいって、シリーズ化したところで綺麗に完結する見込みは薄いだろう。設定の風呂敷を広げるだけ広げて、超展開で〆るのが関の山というものだ。
リリスのようにシリーズ完結の信頼性がないブランドがまずやるべきことは、ライトノベルの新人賞作品のように、ひとまずその作品だけで完結した体裁をとることだ。
これは、後のシリーズ化を狙っていようがいまいが関係ない。重要なのは「すべての作品は必ず完結する」という原則を守ることだ。続編を意識していることを隠し、売上や人気の動向をみて打ち切るかどうかを決定する、といった卑怯な日和見を続けるブランドは、ユーザーからの信頼をひたすら失い続けるだろう。
3. エロシーンについて
トワコと麗佳は、調教の早い段階で奴隷の烙印を焼かれる。そのシーンは、(トワコに関しては)焼きごてを押されるところから描かれる。
この烙印の効果によって、トワコと麗佳は調教師に逆らえなくなる。さらに媚液漬けにされた結果、処女喪失前から肉体の反応はかなり敏感になる。彼女たちは面従腹背を貫こうとするが、烙印の効力は潜在意識レベルにも及ぶらしく、自尊心を保つことはなかなか難しいようだ。
出典:同上
左胸の烙印のせいで逆らえないトワコ。
この設定は、要するに『鋼殻のアイ』の潜在刻印の焼き直しだ(多少違いはあるが、比較すると『鋼殻のアイ』の深刻なネタバレになるので省略)。個別のエロシーンについては、一部のマニアックなものは、対魔忍シリーズなどの過去作で人気のあったシーンを発展・変化させたという印象がある。
演出レベルでは、1本のエロシーンに複数の一枚絵を当てており、『対魔忍アサギ3』を彷彿とさせる。かの作品のレビューでも述べたように、私はこの手法を基本的には歓迎している。だが、本作におけるその演出に関しては、「良かった」と思うのと、「悪かった」と思うのとで半々くらい。
例えば、トワコが痴漢に犯されるシーンや、夕闇とトワコのエロシーンは、確かに良かった。前者はテキストの心理描写も良く出来ていたし、後者は「こ、これは、アタシんだ!」と精液を貪るトワコがエロかった。
しかし、主に中盤にあるエロシーンは、あまり出来が良いとは思えなかった。一枚絵を贅沢に使ってはいるが、テキストがそれを上手く活かせていない。もっとコンパクトにまとまるはずのエロシーンが冗長に引き伸ばされているような印象を受けた。
4. コメント
不作続きの今年の黒リリス作品のなかでは、比較的マシなほう(『対魔忍アサギ3』は、黒ではなくアニメリリス)。シナリオは構成がひどいが、テキストだけなら前3作(『女剣闘士ミネルヴァ』『魔法少女カナタTS』『妻ネトリ』)と比べてずっと良い。全部ではなくても、いくつかお気に入りのシーンが見つかるのではないかと思う。
あまり期待せずにやるなら、楽しめるかもしれない。だが、もし未プレイなら、私は『対魔忍アサギ3』か『鋼殻のアイ』のほうをオススメする。
- 総合評価 120/200点
- シナリオ 15/60点
- グラフィック 65/80点
- 音声 30/40点
- システム 10/20点
作品情報
タイトル | 陰陽騎士トワコ ~蛇神の淫魔調教~ |
ブランド | Lilith |
発売日 | 2013年08月23日 |
ダウンロード販売 | DLsite FANZA |
パッケージ通販 | Amazon 駿河屋 |